R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

煉獄のSAKURA(その12)

2009-10-03 05:24:14 | インポート

第十二章 想い

 場面は変わって節子の家。節子が、そわそわしながらも、座って母の帰りを待っている。

節子 おかあちゃん、帰ってこないなぁ。大丈夫かなぁ。

 節子、ふと奥の座敷が明るいことに気がついて、ずるずる体を引きずって、奥の座敷を見に行く。

 パチパチと、火のはぜる音が聞こえる。

節子 あれっ、家も燃えてる。おかあちゃん!。おかあちゃん!。

 みるみる、周りが赤々と燃え出す。

節子 おかあちゃん!

節子 …もしかして、足の悪い、役立たずの子だから、ここに置いてきぼりにされたのかな。

 私、歩けないけど、まだしたいことがいっぱいあるよ。おかあちゃん!おかあちゃん!

 節子、取り乱してわめき散らしている。

 そこへ、父が現れる。

父 節子!

節子 お父ちゃん!

父 大丈夫だ心配するな。

節子 家も、裏が燃えてるよ!

父 何!

 父、裏の様子をチラッと見る。

父 母ちゃんは!

節子 おばちゃんちに行った。

父 何やってんだ!節子を置いて!

節子 私、役立たずだから、ここで焼かれて死んじゃうんだと思ってた。

父 何、馬鹿なこと言ってるんだ!ほら、来い!

 父は、背中を節子の方に向ける。

 節子、父の背中にしがみつく。

節子 大事なもの持たなくていいの?

父 家で一番大事なものっていったら、節子だけだ。節子が生きていれば、もう、何が焼けてしまっても、構いやしない。

節子 お父ちゃん…。

父 走るぞ。しっかりつかまってろ。

節子 うん。

 

 シルエットになった節子を背負った父が、走り出す。

 暗 転