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ミステリ感想-『記憶の中の誘拐』大山誠一郎

2022年01月15日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
卒業式の前日に校舎屋上で死亡した少女。彼女が死の直前に語りかけていた先輩とは誰か…夕暮れの屋上で
死者が出ないよう配慮する放火魔は、ある人に会うために放火を繰り返していた…連火
死体を10分割された男の妻は、発見の前日に飛び込み自殺を遂げており…死を十で割る
24年前、私は借金していた同僚を殺し、罪を免れた。だが…孤独な容疑者
5歳の頃に誘拐された友人。しかし身代金を放棄して犯人は消え、両親に救出され…記憶の中の誘拐


~感想~
ドラマ化もされた赤い博物館シリーズ第二弾。時効かその寸前の未解決事件を、調査資料だけで敏腕変人美女警視が解き明かす…はずだが、本作では警視が毎回調査に出張っていく。
わざわざ行かなくてもいいケースも有り新作ドラマ化を意識し(ry

それはともかく内容はいつも通りの「余計な情報が出てきたら100%伏線」な大山ミステリらしい、まじりっけなしの推理ゲーム。だが近年はだいぶ書き慣れてきたのか、不自然すぎる描写や都合の良すぎる偶然の嵐はだいぶ控え目で、本格ミステリを成立させている。
1~2編目こそ手掛かりが揃った時点で真相がわかってしまうような拍子抜けな物だが、3編目を頂点にいつもと同等のクオリティを保ち、それに加えて緋色警視の捜査も、安楽椅子探偵だけではない、古畑の系譜に連なる、何気ない質問から解決にたどり着く面白さがある。
作者は新作を出すごとに長所を磨き、それを元に新たな手管を繰り出して来ており、このまま行けば10年後にはどこまで行ってしまうのかとすら思う。大山ファンなら間違いなく楽しめる好短編集である。

それはそうと解説は「ネタばらしにならいよう注意を払って」と言った舌の根も乾かないうちに、解決で初めて開示される手掛かりをバンバン明かしていく近年稀に見るクソ解説のうえ、検索すると出版社のサイトでも紹介されているので、くれぐれも先に読まないようご注意の程を。


21.1.6
評価:★★★☆ 7

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