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ミステリ感想-『バーニング・ダンサー』阿津川辰海

2024年08月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある時、世界に現れた100人のコトダマ遣い。100の言葉を媒介に様々な能力を使う彼らは、あるいは犯罪者となりあるいは刑事として能力を活かした。
日本に誕生したコトダマ犯罪調査課SWORDには7人のコトダマ遣いが所属し、コトダマを用いた犯罪の調査に当たる。


~感想~
帯には「最高峰の謎解き×警察ミステリ!!」と警察物を強調されているが、どう考えてもバリバリの特殊設定ミステリである。
100人のコトダマ遣いは死ぬと別の人間にランダムにコトダマが受け継がれるというだいぶ「ワンピース」の悪魔の実に近いもので、能力の設定もだいぶゆるく、なんでもありになってしまいぶっちゃけ面白くなるとは思えない。
そこを作品全てが本ミスランクインしている本格の鬼・阿津川辰海はいかにクリアしたかというと、帯にあるようにあくまでガチガチの警察ミステリとして描くことで打開を図った。
時にコトダマバトルが繰り広げられる以外はまるで普通の警察ミステリのように振る舞い、捜査が進むごとに丹念に事件の構図や得られた手掛かりを箇条書きで記し、地道に描いて行く。だがそれがお世辞にも成功しているとは言えず、どんなに伏線を細かく張って推理を紡いでみせてもぶっちゃけ「う~~んやっぱりコトダマが余計!」という結論に落ち着いてしまう。
作者が特殊設定ミステリをあまり描き慣れていないこともあり、やりたいことと隠したいことがコトダマ周りの設定でほぼほぼ丸見えで、同じく帯にある「怒涛のドンデン返し」もだいたいが予測できてしまった。
しかも物語の結末があからさまに続編を意識したもので、本作も面白くなかったわけでは無いが真価が発揮されるのは(出るならだが)シリーズ2作目の方。
ネタバレにならないと思う感想だと「2作目で阿津川版mediumみたいなのやろうとしてます?」と聞きたくなる。
シリーズ続編へ向けての助走・種まきとも取れるし、この一作で終わりでも全然おかしくない。でも2作目があるならそっちですごいことしてきそうなので、単品では決して高い評価はできない、そんななんとも感想に困る一冊だった。


24.8.21
評価:★★★ 6
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