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ミステリ感想-『爆弾』呉勝浩

2024年07月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
酔って酒屋の店主を殴り逮捕された自称スズキタゴサクは、霊感と称して爆破事件を予言。
嘘八百を並び立てた饒舌な会話の中に次の爆破のヒントを織り込ませ、警察を翻弄する。

2022年このミス1位、文春4位、直木賞候補


~感想~
己を極端に卑下しつつどこまでが真実かわからない口八丁で取調官を翻弄するスズキタゴサクという特異なキャラを作った時点で勝利確定。
あの本格ミステリ史に残る白井智之「名探偵のいけにえ」を退けてこのミス1位に輝いたのは伊達ではなかった。
様々な取調官と心理戦・頭脳戦を繰り広げる一方で、警官たちは地道に手掛かりと爆弾を求めて人海戦術を展開し、息せき切る攻防が延々と続く。
ミステリ的に見ればヒントや爆弾の在り処はまず読者には解きようも無いものながら、取調官との舌戦は非常に読ませ、サスペンス的に面白いのでフェアかどうかは全く気にならない。
また個人的な好みと偏見ながらこういった劇場型犯罪はミステリにおいて大抵それほどの被害が及ばないものの、本作では洒落にならない被害がもたらされスリルも満点。
ミステリ的魅力も爆弾のヒントとは別のところにかなりの大仕掛けが施され、そっちの期待も裏切らない。
ラストこそ少々あっけなく、多くの謎も取り残されたが、シリーズ化してまだ何作か続く模様であり、後の展開が楽しみである。


24.7.25
評価:★★★★ 8
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