~あらすじ~
不世出の長唄の名人とうたわれた人間国宝・安東喜左衛門の傘寿を祝う、大ざらえを控えた安東家で殺人事件が起こる。
妻妾同居し、骨肉相食むような愛憎の渦巻く一族の中で、しかし殺されたのは部外者のはずの弟子だった。
一族の誰が標的とされてもおかしくない中、なぜ彼女が? 謎が解けないまま迎えた下ざらえで起きた第二の事件の被害者もまた……。
80年文春4位、81年日本推理作家協会賞・候補、本格ベスト36位
~感想~
記念すべき伊集院大介のデビュー作でもある本作。栗本薫を読むのは初めてだが、950枚という長大さを感じさせない抜群の筆力とストーリーテリングで一気に物語に引き込まれ、作者の実力をまざまざと感じた。
それなりに多く、一族だけに名前も似通った人物たちの書分けも上手く、個性豊かな彼らの思想信条から導かれる強烈な動機も説得力十分。
犯行経緯や計画等は強引なところも多々あるのだが、動機のすさまじさに目を奪われ、細かい瑕疵は気にならない。
また一連の事件の犯人も意外で、クライマックスの場面で断末魔とともに吐き出されるある人物の名前も実に意外。終わってみれば全体の構図はあからさまなまでに終始、目の前にさらされているというのに、全く気づくことができなかった。
ラストシーンも印象深く、ミステリのみならず物語としても傑作といって過言ではあるまい。
またBL要素は無くてもいいようなものだが、作者は本邦における元祖・腐女子と言っていい存在と聞いては文句の言えるはずもない。
なお82年刊行の講談社文庫版の解説は中島河太郎が務めているが、いつも通り予告無しでノーモーションのネタバレをしており、真相だけは申し訳程度に隠した、と思ったそばから真相も結末も一気に明かす手法に笑ったが、くれぐれも先に読まないように。
上巻 17.2.6
下巻 17.2.9
評価:★★★★ 8
不世出の長唄の名人とうたわれた人間国宝・安東喜左衛門の傘寿を祝う、大ざらえを控えた安東家で殺人事件が起こる。
妻妾同居し、骨肉相食むような愛憎の渦巻く一族の中で、しかし殺されたのは部外者のはずの弟子だった。
一族の誰が標的とされてもおかしくない中、なぜ彼女が? 謎が解けないまま迎えた下ざらえで起きた第二の事件の被害者もまた……。
80年文春4位、81年日本推理作家協会賞・候補、本格ベスト36位
~感想~
記念すべき伊集院大介のデビュー作でもある本作。栗本薫を読むのは初めてだが、950枚という長大さを感じさせない抜群の筆力とストーリーテリングで一気に物語に引き込まれ、作者の実力をまざまざと感じた。
それなりに多く、一族だけに名前も似通った人物たちの書分けも上手く、個性豊かな彼らの思想信条から導かれる強烈な動機も説得力十分。
犯行経緯や計画等は強引なところも多々あるのだが、動機のすさまじさに目を奪われ、細かい瑕疵は気にならない。
また一連の事件の犯人も意外で、クライマックスの場面で断末魔とともに吐き出されるある人物の名前も実に意外。終わってみれば全体の構図はあからさまなまでに終始、目の前にさらされているというのに、全く気づくことができなかった。
ラストシーンも印象深く、ミステリのみならず物語としても傑作といって過言ではあるまい。
またBL要素は無くてもいいようなものだが、作者は本邦における元祖・腐女子と言っていい存在と聞いては文句の言えるはずもない。
なお82年刊行の講談社文庫版の解説は中島河太郎が務めているが、いつも通り予告無しでノーモーションのネタバレをしており、真相だけは申し訳程度に隠した、と思ったそばから真相も結末も一気に明かす手法に笑ったが、くれぐれも先に読まないように。
上巻 17.2.6
下巻 17.2.9
評価:★★★★ 8