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小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『暴雪圏』佐々木譲

2010年02月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
十勝平野が十年ぶりの爆弾低気圧に覆われた午後、帯広近郊の小さな町・志茂別ではいくつかの悪意がうごめいていた。
暴力団組長宅襲撃犯、不倫の清算を決意した人妻、職場の金を持ち出すサラリーマン……。それぞれの事情を隠した逃亡者たちの運命が絡み合ったとき、恐怖の一夜の幕が開く。
すべての交通が遮断された町に、警察官は川久保篤巡査部長のほかいない――。


~感想~
前作『制服捜査』では地方の一駐在を主人公に据え、警察小説の新境地を拓いたのだが、前作のいい所がほとんど消えてしまった印象。
ただでさえ警察組織の末端のため、捜査にたずさわることもできず、私立探偵と大差ない権限の川久保が、今回は暴雪に閉じ込められ交番を出ることさえままならない。したがって鋭い推理を見せる余地などなく、推理を働かせられなければ事件も錯綜しようがなく、ひとりでに決着を迎えてしまう。
数々の事件・物語が同時進行で起こり、複雑に絡み合うのだが、絡み合っただけで終わってしまい、大半の事件が中途で投げ出されるのも不満。それどころか主筋の物語すら吹雪の中に隠れたように明確な決着を見せず、ありとあらゆる要素が半端なのも痛い。
前作にあふれていた本格魂などは当然望むべくもなく、無駄に力の入った濡れ場とあいまって2時間サスペンスドラマの雰囲気が充満。これを川久保篤シリーズとして、あれだけの傑作だった『制服捜査』の続編として書いた意味がどこにも感じられない。
作者も川久保も出版社も誰一人として得をしない、全くの駄作である。


10.2.13
評価:★☆ 3
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