内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

遠ざかりゆく学生たち

2023-05-19 23:59:59 | 雑感

 今日が今年度最後の試験だった。午後四時から、この試験を最後に卒業していく学部三年生たち三十数名が準備した送別会がキャンパス内の緑地で行われた。三年生の授業を担当した日本学科の教員すべてが招待された。送別会といっても、特にセレモニーめいたものはなく、学生たちが準備した食べ物や飲み物を飲食しながら歓談し、集合写真を撮るだけのことだが、みな三年間(留年した学生はもっと長い期間)の学業を終え、その多くは晴れ晴れとした顔をしている。
 夏のヴァカンス後、それぞれ次のステップへと進む。日本とは違って、学部を出てすぐ就職する学生はほぼ皆無に等しい。日本学科ではそれはまずあり得ない。日本に留学する者、ストラスブールで日本学科あるいは他の修士課程に進学する者、他の学士号の取得を目指す者、パリの高等教育機関の修士課程に進学する者などなど、まだ二・三年は学業を続ける学生たちがほとんどだ。前途洋々と単純には言えないが、彼らのこれから先の長い人生の幸いを祈念する。
 学生たちはつねに若い。そして私はただ老いてゆくばかりだ。眼の前にいる学生たちが年ごとに遠ざかってゆく。

それからわたしは何歳も年をとった。でも、少しでも賢くなったかといえば、親指ほどにもそうはなっていない。今のわたしと、少し前のわたしは、たしかに二つの存在である。しかし、どちらのわたしのほうが優れていたかとなると、なんともいいようがないのである。もしも人間が、もっぱら良い方向に向かって進むのならば、年を重ねることはすばらしいことだろう。だが、それは千鳥足で歩く酔っ払いの、めまいに襲われた、形をなさない動きなのだ。あるいは風のふくままにゆれうごく葦のそよぎなのだ。

モンテーニュ『エセー』第三巻第九章「空しさについて」白水社版・宮下志朗訳(一部改変)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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