昨日午後、二件、人と会う約束があった。
一つ目は、東大の本郷キャンパスで、S教授とその指導下で博士論文準備中の台湾からの留学生と会う約束であった。教授の方から私に相談したいことがあると七月半ばに連絡があり、ちょうど一時帰国中だから直接お目にかかって話しましょうということになった。
東大で推進中の博士課程学生支援プログラム SPRING GX の枠内でストラスブール大学に短期研究滞在をしたいという留学生とS教授からの話を一時間あまり聴いた。欧州における日本学の成立と変遷について現地調査を行いたいというのが滞在志望理由である。受け入れに問題はないので、喜んで引き受ける旨お伝えした。
もう一つの約束はオンラインでの話し合いであった。こちらはかなりデリケートなケースで、慎重に対応する必要があった。個人情報に関わる部分はいっさい省いて概略のみ記す。
来週から始まる集中講義にオンラインで参加したいという依頼メールが履修登録学生の一人から届いたのは一昨日のことであった。想定外で驚いたが、即座に対応した。
まず、当該の学生に、集中講義開始前に一度オンラインで面談し、さらに依頼内容について詳しく知りたい、その上でどのような形態がベストか話し合いたい、とメールを送った。当人からはすぐに受諾の返事があり、その返事のなかに、オンライン面談に学生サポート室の担当者の同席を希望するとあったので、もちろん了承した。
と同時に、当該学生を学部一年生からサポートしてきたピアサポートルームの担当者にも連絡し、これまでの経過を詳しく知りたいから直接会って話したいとこちらから面談を申し込んだ。やはりすぐに返事があり、面談は木曜夕方に白山キャンパス内のピアサポートルームで行われた。
その席には大学院教務課の担当者も一人同席した。一時間弱の面談だったが、担当者からの説明のおかげで当該学生の抱えている問題の輪郭がかなりはっきりしてきた。
昨日の学生本人と学生サポート室の担当者とのオンライン三者面談は、当該学生が私からの質問に回答を求められることに負担を感じないように極力配慮しながら行われた。結果として、私が事前に得たいと思っていた情報は得られ、伝えたいと思っていた意向もほぼ理解してもらえたと思う。
集中講義一コマを担当するだけの非常勤にすぎない私がこれだけ迅速かつ丁寧に対応したのには理由がある。本務校であるストラスブール大学でミッション・ハンディキャップの学科担当教員の責任を二年間負った。そのときの経験を通じて、ハンディキャップごとに適切に対処するためにはきめ細かで多様な対応が求められることがよくわかった。現実には、関連セクションの連携がまだ不十分で、特に当該学生に授業で接する現場の教員への負担が大きく、支援システムがよく機能しているとは言えなかった。
今回のケースは、ハンディキャップをもっている学生たちに対して日本の大学ではどのような支援システムが構築され、現に運用されているのか、それがどれほどの成果を挙げているのかを、当事者の一人として現場で観察する機会を期せずして与えられたことになる。当該学生への適切なケアが最優先であることは言うまでもない。
これは私にとって思いもよらぬめぐり合わせとも言える。なぜなら、九月からの日仏合同ゼミのテーマは「ケアの倫理」であり、もし来年度も集中講義を担当することになるならば、同じテーマを取り上げるつもりでいたからである。
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