内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

うつ病化する現代社会をどう生きるか―認知行動療法と行動活性化療法の予防法的実践

2020-10-24 23:59:59 | 雑感

 岡田尊司の著書を立て続けに数冊読んで、つくづく現代社会の生きにくさを痛感させられ、こんな社会でうつや気分障害にならないほうが不思議だとさえ言いたくなる。私自身、自分自身について、このままだとおかしくなりそうだと思ったことは、ここ数年に話を限っても、一再ならずあった。
 そこへコロナ禍である。それまで特に問題なく家庭生活や社会生活を営んできた人たちだって、ちょっとおかしくなっても仕方ないような状況にすでに半年以上私たちは置かれている。それは私たちそれぞれが頑張って克服するなどというレベルを完全に超えている問題であり、それがいつまで続くかわからないという不確定性は、未来に希望を託すことさえ難しくしている。
 そのうえ、異なるものに対して、異を唱えるものに対して、社会がどんどん不寛容になっていることを示す事件が連日のようにメディアによって報道されている。コロナ禍に対して、社会全体として一貫した対応をしなければ、感染拡大を抑えることも、予防することもできないという状況が、それ以外の事柄についても、異なったものへの不寛容、さらには敵意を増幅してしまっているように思える。
 このような過剰な社会の同調化傾向は、社会全体のストレスを亢進させ、かつストレス耐性を低下させる。結果、社会全体がうつ状態に陥りかねない。
 うつを防いだり、うつから回復するためには、まず否定的な認知や堂々巡りの思考を止めることがとても重要だ。そのためにはどうすればよいか。
 一つは認知療法である。一九六〇年代初頭、若手の精神科医だったアーロン・ベックが創始したこの療法は、患者たちに、まず思考内容を書き留めさせ、それを患者と共に、物事の受け止め方という観点から吟味することからなる。否定的な認知を脱する第一歩は、それを自覚することだということである。
 この認知療法と、恐怖症や強迫性障害の治療として行われていた行動療法を組み合わせて誕生したのが、認知行動療法である。認知的に取り扱うだけでなく、さまざまな実践的トレーニングを組み合わせるのが認知行動療法の特徴である。
 しかし、認知療法に不可欠な記録が継続的にできない人たちもいる。そういう場合にも適用できる方法が、行動活性化療法である。行動を変えることで、間接的に、気分や考え方を変えようとするアプローチである。思考や感情は、行動と密接につながっていて、思考や感情を直接変えなくても、行動を変えることで、変化させることができることをこのアプローチは実証している。
 もし私が、辛うじてであれ、うつにも気分障害にも陥っていないとすれば、それと知らずにこれらの療法を予防策として自分で実践しているからである。つまり、このブログが認知療法に、授業で教師という役割を実践することが認知行動療法に、水泳とウォーキングが行動活性化療法に相当する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿