内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

ヴァカンスも終わりを告げようとしている ― 夏休み日記(24)

2015-08-25 09:20:28 | 雑感

 年々フランスの大学の新学年度開始が早まっている。今年などは九月一日からで、こうなるともう小中高と一緒である。もっとも最初の週は、« pré-rentrée » と言って、新入生を対象としたオリエンテーション週間なので授業はない。しかし、そのオリエンテーションに教員として出席しなくてはならないプログラムがあるから、新年度の仕事始めには違いない。
 前任校でもだいたい同様であったが、さすがに九月一日からということはなかった。もちろんこれは夏休み前からわかっていたことだし、学年度の始まりが早い分、実質的な学年度の終りも早い。授業など四月半ばに終わってしまう。その後は追試だけであるから、それを受ける必要のない優秀な学生は、五月から八月末までの四ヶ月間大学に来る必要がないわけである。教員の方は、採点やら成績判定会議やらで六月末か七月の頭まで仕事はあるが、講義は四月半ば以降まったくない。
 こんなに早まった理由の一つは、ヨーロッパ諸国で新学年開始時期を統一し、学期ごとの学生たちのヨーロッパの大学間での移動を容易にするためということであったが、フランス国内でさえ必ずしも足並みは揃っておらず、ましてやヨーロッパ間ではなおのことで、そうなると一体何のために早めているのかわからなくなる。それでも、実質的な年度末後の四ヶ月間をいろいろ有効な仕方で活用することが学生にも教員にも可能になっているという点では、このようなカレンダーに意味がないわけではない。
 ただ、気分的には八月末まではなんといってもヴァカンス気分が支配的であり、その翌日からさっと勉強モードや仕事モードに切り替えるのは学生にとっても教員にとっても容易ではない。授業開始の九月第二週目になってもまだ調子が出ないのが普通である。学生たちは、その体は教室にあっても、気持ちはまだヴァカンス気分を引きずっていて、授業によく集中できていないのが彼らの顔を見ているとよくわかる。
 などと他人事のように言っているが、私自身、毎年のようにこの時期になると、「ああ、もうヴァカンスも終わってしまうのか」と、少し悲しく、憂鬱な気分になる(贅沢言ってますね)。今朝プールの常連の一人が私を見かけると、« Fini(es), les vacances. »(「ヴァカンスも終りだね」)と声をかけてきた。
 書斎の窓外正面に見える隣家の林檎の木は、赤く色づき始めた実をたわわに実らせている。その一枝が実の重みでこちらの住居の敷地内まで垂れ下がっている。樹々の幾層にも重なった緑葉のカーテンの向こうから東南東向きの窓越しに机と本棚の上を揺らめく朝日は、夏休み前は窓の左隅から斜めに射し込んでいたのに、今は斜め前から煌めいて眩しい。プールで泳ぎながら空を見上げると、天高く流れる雲はもう秋の気配を告げている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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