内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

『セネカ、精神的教導と哲学の実践』(10)― 魂の医療としての哲学

2015-11-21 03:52:02 | 読游摘録

 体のダイエットの処方をするのは、古代においては、医者の仕事であった。昨日見たように、体の健康を保つための諸規則の適用に準えて、魂の健康を保つための諸規則の適用を実践する人たちが現れたということは、おそらくそれと同時に、その人たちを「診察」し、適切な「治療」と必要な「処方箋」を与える人たちが登場したということでもある。つまり、「魂のお医者さん」たちの登場である。この魂の医療の専門家が哲学者になっていく。
 哲学は、ちょうど医学が体を治す知であるように、魂の病を治す知であることをその使命とする。アドの本の中に引用されている、L. Edelstein, « Antike Diaetetik » (1931) という論文の一節の仏訳を掲げよう。

Le service que le philosophe rend à l’âme est donc identique à celui que le médecin rend au corps. Et de même que le bien portant a besoin du médecin pour demeurer bien portant ou doit être à lui-même son propre médecin, tout homme a besoin de la philosophie ou doit être lui-même philosophe pour bien vivre (cité dans I. Hadot, op. cit., p. 49).

哲学者が魂に施す世話は、それゆえ、医者が体に施す世話と同じである。そして、元気な人が元気でい続けるためには、医者を必要とするか、あるいは自分自身が自分の医者でなければならないのと同じように、すべての人は、よく生きるために、哲学を必要とするか、あるいは自ら哲学者でなければならない。

 




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