内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

フランス語で読める日本通史の定番

2016-12-26 17:56:23 | 読游摘録

 フランス語で書かれた日本通史はいくつかありますが、フランシーヌ・エライユ(Francine Hérail)先生がご自身の講義録を基にお書きになられた Histoire du Japon. Des origines à la fin de Meiji, POF, 1986 がストラスブール大学日本学科の講義要項には基本文献として挙げられています。
 本書は、先史時代から明治末まで、一人の著者によってバランス良く書かれた標準的な日本通史として出版当初から評価が高い。ところが、この本が現在絶版なのです。幸いなことに、電子版は誰でもこちらから無料でダウンロードできます。学生たちにとってこれはとてもありがたいことです。
 私は一冊持っています。常に授業の準備の際に参照するので、机に向かったままで書架からすぐに手に取れるところにいつも置いてあります。前任校時代からかれこれ十年使い続けているので、もう大分傷んでいて、何箇所かで本背表紙裏の糊付けが割れてしまって、それを何度も自分で糊付けしなおしたり、セロテープで補修したりしながら使っています。
 もちろん、日本史学の今日の学説からすると古びでしまった部分もあるけれど、それらの箇所については、こちらが授業の際に学生たちに注意を促せばよいことで、フランス語で読める日本通史として第一に推薦するに値する本であることには変わりはありません。
 エライユ先生のご専門は、奈良・平安時代の社会制度史で、王朝時代の貴族の日記をお訳しなってもいます。先生にはまた、La cour du Japon à l’époque de Heian aux Xe et XIe siècles, Hachette, 1995 というご著書があり、 今年度後期の授業では大いに参照させていただくことになるでしょう。この本、アマゾンで検索したら、古本しかなく、一番安くても57ユーロします。今回蔵書を整理していて、確かこの本を持っていたはずだと探したら出てきました。留学して二、三年後、つまり、十七、八年前に購入した本です。
 やっぱり、本は、すぐには読まなくても、買えるときに買っておくものですね。これは、この本に限らず言えることで、買ってから随分経ってから、役に立ったという経験は、私自身これまで何度もありました。それだけに、今は必要ないからという理由だけで売り払ってしまうことには躊躇いがあり、蔵書を整理しながら、悩ましいところです。












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