内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

世間難住 ― この憂き世に彷徨いつつ

2014-01-08 03:03:03 | 雑感

 この記事のタイトルは、萬葉集巻五・八〇四の山上憶良の「哀世間難住歌」から取った。白川静は『後期万葉論』(1995年)で、この題を「せけんなんじゅうをかなしぶるうた」と訓んでいるが、伊藤博は「せけんのとどみかたきことをかなしぶるうた」(『新版万葉集』2009年)、岩波文庫新版『万葉集』(2013年)では「せけんのとどまりがたきをかなしみしうた」と訓じている。いずれにせよ、この世の無常・移ろいやすきを嘆き悲しんだ歌ということである。序に導かれた長歌の冒頭四句のみ引く。「世の中の すべなきものは 年月は 流るるごとし」
 このアパルトマンに暮らすのも残り半年を切った。年末年始の不在中に届いていた郵便物の中に、このアパルトマンを売りたい大家さんからの正式な立退き請求があった。期限は六月末。すでに昨年中に大家さんの口から直接聞いていたこととはいえ、アパルトマン探しの困難を思うと本当に憂鬱になってしまう。様々な事情で、今すぐには新しい住居を探し始めることもできない。住んでいる場所に落ち着いていられないというのは、それだけで精神を不安定にする。
 気分を切り替えようと、今日(7日)午後プールに出かける。セーヌ川に浮かぶJoséphine Baker。年末日本で4回プールに行くことができたが、最後に行ったのが12月28日だったから、十日振り。こんなに間があいてしまったのは、昨年7月末から8月はじめにかけて以来のこと。午後になって気温も上がり、晴れ間も広がったせいだろうか、どちらかというと混んでいて、あまり快適には泳げず、一時間弱で上がる。それでも体を動かしたことで気分は少し前向きになる。
 今できることは、あちらこちらから否応なしにのしかかってくる精神的・物質的重圧に辛うじて耐えつつ、一日一日、目の前の仕事に集中することだけ。今日と明日はイナルコの講義「同時代思想」最終回の準備に集中しよう。