旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

岸恵子さん

2018年12月26日 14時02分24秒 | エッセイ
岸恵子さん

 岸恵子さんと言えば、『君の名は』(3部作)の真知子巻き。見たことないけど。アニメの『君の名は』なら何度も見た。監督の新作が楽しみだ。
 どちらも男女のすれ違いが切ないのだろうけれど、スマホとインターネットの現代では、すれ違うのに相当複雑な設定がいるのね。真知子さんの時代なら、簡単にすれ違えたのに。

 岸さんは横浜の生まれで、県立平沼高校を卒業している。お袋の3年後輩だ。この違いは大きい。勤労奉仕で軍需工場で鉢巻をして働き、横浜大空襲では焼夷弾の中を逃げまどい、焼け跡でたくさんの黒焦げ死体を見たお袋。疎開先から戻って、焦土と化した平沼商店街を見た岸さんとでは、衝撃の度合いが違う。

 戦後、横浜市西区戸部町7丁目で洋服店(紳士服オーダーメイド)を営んでいた我が家は、店の前が当時市電の走る国道1号線。裏に廻れば、帷子川を挟んで平沼商店街。昔は縁日をやるほどの賑わいだった。今は寂れて見る影もない。
 市電の運転手をしていた叔父さんの弁当は、店の前で待っていて毎日手渡ししていたという。戸部映画館もあったし、活気のある町だったんだ。

 さてご近所の岸さん、何故かうちに訪ねてきたことがあったそうだ。彼女が女学生の時だろう。おばあちゃんがよく話していた。でも何故かお袋から聞いたことはない。留守だったのかな。
 おばあちゃんの話でよく繰り返されたのは3つ。関東大震災とそれで弟が死んだこと。おじいちゃんが召集されて中国に行き、2年後?に帰ってきたこと。その2年間で一度も敵兵に出会わなかったが、マラリアを持ち帰ってこと。7日ごとに高熱を出し、布団と毛布にくるまってガタガタ震えていたこと。それと岸恵子さんが家に訪れたことだ。
 目の覚めるほど綺麗でお上品なお嬢さん。これがおばあちゃんの第一印象なのだが、ばあちゃんのビックリはその後だ。
 その日、何故彼女が家に来たのかは定かではない。忘れてしまった。何か頼まれごとでも引き受けたかで、お礼に多分菓子折りなど持参されて来られたらしい。
 おばあちゃんのビックリは、その後女優になった岸さんが、凄いアバズレを演じたことだった。「あんなに上品なお嬢さんがねえ。」戸部映画館で見たんだろうな。

 子供心にその言葉を覚えていて、後で勝手に彼女が出たのは、『肉体の門』(見たことがある。最初の方だと思う)だと思い込んだ。今回ネットで岸恵子さんのプロフィールを見ていたら、『肉体の門』に出演していないことが分かった。あれっ?じゃあ、どの映画?

 さて話は替わるが、精神科の先生の本を読んでいたら、岸恵子症候群(先生が勝手に命名)なるものが出て来た。決して岸恵子さんが精神を病んでいるのではない。間違えたらアカンよ。ある種の女性患者の妄想に岸恵子さんひんぱんに出てくるのだ。
 「私は実は腹違いの岸恵子の妹なの」「私の従姉妹は岸恵子」「岸恵子とは子供の時からの親友」とか患者(必ず女性)の妄想の中に岸さんが実によく出てくるらしい。またも現れたか、岸恵子。
 精神の照準が一般生活を送る範囲を超えてしまった人達が気になる、憧れの存在が岸恵子さんなのだ。でもこれは、範囲内の一般の人でも同じだろう。あの時代、女優でフランス人と結婚してパリに住み、アラン・ドロンやウィリアム・ホールデンと友達付き合い。
 パリに憧れパリを知らずに、あくせくと日々を生きる女性たちの夢。何しろパリまでプロペラ機で48時間かかった時代だ。
 当人からすれば、「何よ、人の苦労も知らないで。パリに住めば、自然にフランス語が話せるようになるとでも思っているの。」となるよな。

 岸恵子さんは、女性が好きな(憧れる)女優さんなんだろう。男性も当然だけど。逆に男性に支持され、女性から総スカンを食う女優は誰?
 まずは清純派じゃあないかな。八千草薫、吉永小百合(共に若いころ限定)。「ふん、何よ、ウンコもしないって言うの!」あとはブリっ子、肉体派?ブリジット・バルドー、ソフィア・ローレン?本格派もそうかな。エリザベス・テーラー、カトリーヌ・ドヌーヴ。オードリー・ヘプバーンは女性ファンが多そうだ。安室奈美恵は圧倒的に女の子に愛される。

 今、岸恵子さんの『巴里の空はあかね雲』(新潮文庫)をブックオフで買って読んでいて、こんなことを思いました。ちなみに岸さん、かなりブっ飛んだ女性です。えらくキップのよい人なのだ。会って話したら、相当面白い人だろうな。
 本の中にこんな一文があった。引用しますよ。『男にもてる自信はないが、女子供とおかまサン、そしてお年寄りには無差別に、イヤというほどもてはやされるケイコさんなのである。』確信犯だ。
 おばあちゃん、16-7歳頃の彼女に会えて良かったね。その一瞬、7分間の出会いは、一生の宝物だよ。



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