旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

ヤンゴン徒然 ④ 勘違い

2020年09月28日 19時50分07秒 | エッセイ
ヤンゴン徒然 
④ 勘違い

 お早う。同僚の先生たちが出勤してきた。彼女たちが、職場でまずすることは朝食。何はなくとも飯。家から持ってきたのか、途中で買ったのか、ビニール袋の中身をお茶を沸かして食べる。

 そして昼食。お弁当が多いが、出前や買い出し、時にはインスタント麺。そして時間があると、辛いサラダやブタ肉を使った一品を作る。おかずを分け合って、みんなで食べるのは楽しい。そして、お弁当のおかずの方が、店屋のものより断然美味しい。

 自分とスズキさんは出前が多い。チャーハンや焼き肉、10種類はある麺から選ぶ。メニューはない。何軒もの店から取り寄せる。向かいのパン屋で、ホットドックやメロンパンを買うこともある。俺は、またよく外食をする。近所の飯屋を開拓中だ。

 また通勤途中に買った芋(中身がオレンジのと紫色の、サツマイモのような)や、ツヤツヤとしたトウモロコシを圧力窯で蒸かす。35円でイモなら3本、唐黍なら2本買える。季節の果物もよく買う。小さな小さなミカン、パパイヤ、カットしたスイカなどだ。芋や唐黍は、切って昼食に出す。

 午後、彼女たちはキッチンでゴソゴソし始める。3時か4時ごろになると、何か作って食べている。一度覗いたら、みんなでピザを出前して食っていた。お菓子もよく食う。これは、キッチンでなくて受付でも食う。一日中、食っている。でも一人を除いて太っていない。一番食うデカ弁当のニイニイ先生はガリガリに痩せている。

 ある朝、路上(朝だけ、道路の上にザルを並べて野菜や果実、肉や魚、切り花等を売る)で、里芋っぽいのを見つけた。早速、圧力釜に入れた。ところが、時間が来てふたを開けると変だ。食い物ではなくなっていた。なんで?

 「えー、これをお釜に入れたの?この野菜は、皮をむいて生で食べるものなのよ。」
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 みんなで花火がやりたかった。よろずスーパーのような店に行っても、花火は売っていない。たまたまVisa更新で行ったタイで花火を見つけた。でも一種類しか入っていない。同じ花火が一つの袋に何本も入っている。

 下町のチャイナタウンに行ったら、旧正月が近いせいか賑わっていた。様々な種類の花火が売っていた。赤や金、青で装飾された50cmほどの細長い紙袋に入れてある。中は見えない。そんなに高くはないので買った。これで、4-5種類の花火が揃った。

 さあ、やろう。暗くなったらみんなで花火だ。すると、気の毒そうな顔で言われた。

 「あのね、キタさん。花火は、警察の許可を取らないと出来ないの。ちょっと隠れてやるくらいなら、出来ないことはないけど。でも、これ花火じゃあない。これみんなお線香だよ。」
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 日本に一時帰国する時、以前の卒業生で横浜で介護の仕事をやっている二人の女の子に、お土産を持っていくことになった。買い出しを頼んでみたが、日本に行ったことのない先生では、何が喜ばれるかピンとこないらしい。

 自分は、スーパーやコンビニで、駄菓子やラペットウ(蒸した茶葉とナッツ)、安い薬や辛い調味料等を買った。一人の先生は、インスタントの袋めんを山ほど買ってきた。日本にいる女の子のお母さんが、渡して欲しいと、大きな袋を持ってきた。自分のトランクはお土産でパンパンになった。

 土産物屋のような店で、何だか分からないが、香辛料か調味料のような小袋があったので、それも買った。安かった。

 出発前に、それらを見た若い先生が言った。

 「キタさん、これ何だか知ってる?」

 「分からないけど、何かの香辛料じゃないの。」 

 「ハハ、知らないんだ。これ薬だよ。婦人の病気に効く薬。」

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ヤンゴン徒然 ③ミャンマーでメガネが要らないのは

2020年09月26日 21時00分04秒 | エッセイ
ヤンゴン徒然 
③ミャンマーでメガネが要らないのは

 コロナで帰国し、目の検査に行った。昨年受けた白内障の手術から10ヶ月ほど経っていたのだ。子供の時からド近眼でコンタクトレンズをつけていたが、手術で裸眼になった。これは革命的に良かった。

 目がゴロゴロして、夕方からレンズが曇る不快感と手間。レンズと保存液代の節約。つけっ放しで寝てしまう危惧から一気に解放された。

 裸眼の視力は0.5~0.6度なので、一つメガネを作った。焦点は2m先くらいの安いメガネだ。日本にいた時は、遠くを見る時やTVを見る時に使った。

 ところが、ミャンマーに行ってからはメガネを全く使わなくなった。学校にも寮にも、どうせTVは無いし。普段は少人数でミャンマー人生徒に日本語を教えている。でも出張授業で、20~30人に週一回教えていた。
 
 メガネがいるかな、と持って行ったが、これが必要なかった。黒板は近いし、遠くといっても教室の後方の生徒の顔は分かる。これがもし、自分が授業を受けるのだったら、黒板の字を見るために必要だったと思う。

 視力0.5度で何ら不自由は感じない。ただ駅や空港で、天井から釣り下がっている表示板を見る時だけは、メガネがあるとよい。

 ところが日本での生活では、メガネをつけないと何かと不便だ。店でも街中でも、表示物が多いのだ。

 「向こうにいる時は、メガネは全く必要ありませんでした。」と眼医者さんに言った。「ふーん、それはどうして?」と眼医者の女医さんに聞かれた。

 うーん、その時まで考えたことが無かったな。答えはある。その時は言わなかったけれどね。

 ミャンマーでは光が溢れていて、市場でもパゴタでも色彩が鮮やかだ。文字表示は多くないし、そもそも読めない。基本的に広告がない。

 でもそれよりも、目の見張るような美女がほとんど歩いていない。ミャンマーの女性は、ストレートの長髪が多くて、ほとんど薄化粧かノーメーク。しとやかな美人、可愛らしい少女は町中に溢れている。

 でも服装の露出度は全く低く、おおっと振り返る必要はあまりないのだ。俺は好きだけどね。ミャンマーの奥ゆかしい女性。屈託のない笑顔。明るくて恥ずかしがり屋な女の子が。
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ヤンゴン徒然  ②ほっぺに白丸

2020年09月26日 09時52分47秒 | エッセイ
ヤンゴン徒然 

 ②ほっぺに白丸

 女性の化粧で、ほっぺたに赤い丸。韓国の時代劇で見た。昔の結婚式で、ほっぺたとおでこに割と小さな丸を描くらしい。これって中国でもなかったかな。女官とか後宮の美女とかで。

 これを最初に見た時には、強烈な違和感、おバカ感を抱いた。子供じゃあるまいし。でも、俺が間違っていたのかも。

 ある朝、ニイニイ先生が両ほっぺに大きな白いまん丸をつけて現れた。うっ、可愛い。一発で萌えた。

 これはタナカです。ミャンマー女性が普通に行う化粧というか、日焼け止めというか。中には顔中に塗って、白塗り面のおばちゃんとかが、野菜と売っている。葉っぱの形に塗ったりもする。

 タナカという木の枝(かなり太い)が売られていて、硯のようなものですりおろすと、粘っこい液状になるんだ。それをつけると、スースーして気持ちが良いらしい。大人の男性はつけない。





 ほっぺやおでこを白いした娘さんは愛らしい。でもニイニイ先生のタナカは、見事なまん丸で、しかもでかくて濃い。朝一番で彼女の顔を見たら、アっと思って言葉を失い、気の利いたことを言うタイミングを逸した。

 その日は、直接目が合わない角度からニイニイ先生を何度もチラ見した。子供のイタズラのようなほっぺの白丸が何とも可愛い。

 ニイニイ先生は、元々たいへんな美人だが三十路超え。そそっかしくてあけっぴろげな彼女をよく知っているから、普段は面白いとは思っても、セクシーには感じない。でも今日は違う。
 後で聞いたら、スズイさんも全く同じ気持ちだったって。ニイニイさん、またやってくれないかな、あの白丸ほっぺ。

 一歩間違えば、頭おかしいんじゃないの、といった奇抜な化粧が、こんなに効果があるものだとは。

 女官にしろ後宮にしろ、最初に赤丸をやった女の子は、周りに女性から総スカンを食らったにしても、直ぐに王様に呼ばれたに違いない。でも、だからといって、誰もが真似たらいかんよ。皆でやれば、集団発狂。

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ヤンゴン徒然

2020年09月25日 12時35分53秒 | エッセイ
ヤンゴン徒然

① 切り取られた風景

 切り取られた風景の記憶ってある?窓一つの独房に閉じ込められた囚人は、それが塀の前の殺風景な空き地だろうと、長い時間見入るに違いない。

 ゴミが散乱した地面、小石と雑草。一日わずかな時間だけ差す太陽の光。雨が降り続けて、漂ってくるドブの匂い。彼は、彼女は、飯を少し残して窓から放り、集まる虫や小鳥を気長に待つことだろう。

 ヤンゴンでは、学校が借りている寮に住んでいた。ここが広いのなんの。ダンス教室とヨガ道場が併設出来そうなスペースなんだ。ここに一人で半年住んだ。

 この街は表からは分からないが、建物の裏側に広くて細長い空き地が広がっている。一区画の建物群と建物群の間に、幅約5m、長さは30~50mほどのアスファルトの空き地があるんだ。防火帯だな。空き地の両側に排水のドブが流れている。

 雨期に行ったら、フザケルナ!と言われるだろうが、実はこの街の排水はとてもよく出来ている。少々の雨なら、水はサっと引く。雨期に水が溜まるのは、排水量をとんでもなく上回る雨が降るからだ。

 空き地はどこも汚い。この国の人は、道にゴミをポイポイ捨てる。そしてここは、洗濯ものを干すくらいしか利用されていない。空き地の出入り口は、鉄柵で閉じられ鍵が掛かっているので、住人以外は入れない。
 
 たいていは、野良犬の休憩所になっている。犬たちは、ちょっとした隙間から入り込んできて、所構わずにフンをする。空き地はゴミとフンで覆われる。
 
 寮の部屋の角が、キッチンと風呂場兼トイレ(このセットが二つ)だ。洗濯物を干す張り出し窓の一角があり、頑丈な鉄柵で囲まれている。その横に、非常階段から空き地に出られるドアがある。ドアの外は鉄柵、南京錠。

 洗濯は毎日した。バケツで手洗いだ。たいていは、シャワーの時にした。乾期だったので、よく乾く。夜干しても朝までには、ほとんど乾いている。朝干したら、夕方までに毛布でもカラカラに乾く。

 その出窓の前に椅子を置いて、喫煙・喫茶スペースにした。一日最低でも10回は座る。ここが落ち着くんだな。

 そこから見る殺風景な空き地の風景が、目に焼き付いた。向かいの、色のはげ落ちた、落ち武者のようなビル。排水溝とゴミの空き地。

 訪れるものはハト、スズメにカラス。たまにロンジーをはいた半裸の青年、野良犬。そして子猫ほどもあるネズミ。あまりにデカイので、カラスも襲わない。

 青年は、たまにしか現れないが、よくご飯の残りを撒くから、ハトやスズメが集まる。ハトの飛翔能力には驚いた。日本の街中で見るドバトなのだが、向かいのビルの窓にある小さなひさしに飛び乗る垂直飛行は見事だ。

 二羽が狭いひさしに立つと、たいてい喧嘩をして一羽を追い落とす。朝夕、それぞれの路地の光景が目に焼き付いた。

 旅の一瞬の光景も、いくつものストックを持っているが、人生の最期の床で思い出すのは、あの出窓から見た、路地裏の光景なのかもしれない。











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