旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

小学校の卒業旅行

2018年06月25日 20時15分34秒 | エッセイ
小学校の卒業旅行

 実にささやかな卒業旅行だった。ただ気の合った男子4-5人で、電車に30分ほど乗って大きな公園に行き、一日中遊んだだけだ。でもそれは、本当に楽しい一日だった。
 このミニ旅行の企画は自分だが、発案者はお袋だ。こんな風にみんなで行って遊んできたら。ナイス、お袋!小っちゃいが素敵なプランだ。あまり大人数では煩わしいので、俺はこっそりと友達を何人か誘った。2人にその計画を小さな声で話していたら、一人が言った。「△×は誘うの?」俺は答えた。「誘うわけないだろ、あんなスケベ。」えっ?目の前の友達の視線を追って振り向いたら、なんと△×が後ろから何々?と覗き込んでいた。ワー、あんなに気まずい思いは初めてだった。△×にも計画を話し、みんなで行くことにした。

 △×はあんなスケベと言われたのが、むしろ自慢に思えたのかもしれない。でも俺はしばらくあの瞬間を思い出す度に、心の中でワーワー、と記憶を打ち消していた。

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ビートルズの来日

2018年06月25日 09時02分26秒 | エッセイ
ビートルズの来日

 ビートルズの来日は1966年、自分が10歳、小学4年生の時だ。世間は騒然としたが、その時俺は別段ビートルズの音楽に目覚めたわけではない。ビートルズを聞き始めたのは、ずーっと後年のことだ。むしろキューバ危機(1962年)やケネディ暗殺(1963年) の方がよく覚えている。

 けれどもビートルズの来日には忘れられない想い出がある。ほら前回クラスの仕切りやの女の子のことを話しただろ。彼女は太っていて勉強はビリに近いが、女子を中心に人気があった。優等生タイプの俺は、別にケンカをするわけではないが、彼女から距離を置かれていた。
 そのため声を掛けてもらえなかったが、彼女はクラスの6-7人(男子1-2人、他は女子)をまとめて、東京までビートルズに会いにいったのだ。

 電車で1時間とはいえ、横浜の子供が東京に行くのはよほどのことだ。ツタンカーメンの黄金の仮面展とかね。親戚でもいなければ、年に一度あるかないか。そんなものだ。
 武道館を目指したのか、宿泊したホテルに向かったのか。ただやみくもに東京に行ったってビートルズに会えるはずはないが、その行動力と情熱には呆れる。
 しかし集団失踪として学校内で大事件になってしまった。でも俺は羨ましい。その時とんでもなく怒られたとしても、ビートルズのことを思うたびに、あの日の東京行き大冒険を思い出すことが出来るなんて、素敵だ。

 その女の子は翌年また大事件を起こした。三ツ沢公園に行くと、桜の木にサクランボがなっている。食べ放題だ。みんなで行こう。歩いたら2時間はかかる。道に迷って帰りが遅くなり、またサクランボが染井吉野になるわけがなく、今回も大騒ぎになった。

 あの子はカメルーンの笛吹娘か、はたまた少年十字軍なのか。あの行動力、とっぴな発想とカリスマ性。どんな人生を送ったんだろう。2度ほどあったクラス会には、顔を出さなかった。

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或る午後の教室

2018年06月24日 13時39分44秒 | エッセイ
或る午後の教室

 もう半世紀、50年も経つのだから書いてもいいと思うのよ。小学校高学年の、と或る午後の教室。給食の後の授業はけだるい。遠くから流れる先生の声を夢うつつで追っていたら、事件は起きた。自分は教室の真ん中辺に座っていた。突然後ろからシャーっという激しい水音がして、一気に目が覚めた。振り返ると、目が合った女の子が慌てて顔を伏せた。
 その子の顔がみるみる赤くなる。真っ赤になった。後にも先にも、人の顔色があんなに急激に変わるのは見たことがない。女の子は机に突っ伏して、低い声で泣き出した。その一瞬、世界も自分も消えてしまえ、と思ったんじゃないかな。普段活発で、頭の良い子だった。

 我慢の限界が来たのか、具合が悪かったのか。クラスの中にはたいてい世話焼きの女子がいる。勉強も運動もからきし駄目だが、授業以外ではクラスの女子をまとめて、男子をとっちめたり、先生に抗議したりする。その女子がサっと立ち上がり、女の子に声をかけて連れだした。先生よりも手際がよい。

 そんな時、男子は何の役にも立たない。でも僕らは思った。「気にしないで。何とも思ってないよ。明日から気まずいのなんてヤダからね。」

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