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北海道機船漁業協同組合連合会
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一般社団法人北洋開発協会

#2 洋上風力発電と漁業 海外の経験 英国業界 / 室蘭沖に洋上風力 経済界 市に誘致要請 漁業者 生態系の影響懸念

2022-09-26 14:28:09 | 日記

 

2022年09月26日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[#2洋上風力発電と漁業 海外の経験 英国業界]

今年2022年8月、世界最大の洋上風力発電所が完全に稼働し、165基のタービンが英国の約140万世帯に電力を供給するようになった。

“Hornsea 2”沖合風力発電所は、イングランド北部ヨークシャー州沖合に位置し、ニューヨーク市の半分以上の462平方キロメートルの面積に広がっている。

エネルギー安全保障がかつてないほど差し迫った時期に、一般市民はこれらの巨大な海洋施設の継続的な開発を広く歓迎している。

2021年、英国の洋上風力発電は、自国世帯の33%の需要を満たすのに十分な電力を生産した。

2011年のわずか4%から大幅に増加していることを示すインデクスとなっている。

しかし、漁業界の受け止め方は、複雑なものとなっている。

英国の沿岸地域は、再生可能エネルギー革命による経済的、環境的利益が漁業分野を犠牲にしてもたらされるのではないかと懸念を表明している。

シェトランド諸島の漁業者は、洋上風力発電所が重要な白身魚の産卵場に大きな影響を与える可能性があることを危惧している。

洋上風力発電産業評議会(OWIC) が発表した新たなリポートによると、急速に拡大している洋上風力発電セクターは、2030年までに英国だけで約10万人を雇用し、今後8年間の新たな洋上風力発電プロジェクトに対して民間投資が1,550億ポンド (1,800億ユーロ) 見込まれている。

他方、英国漁業の就業者数は2万4,000人で、生産額が14億ポンド(16億ユーロ)、国家経済生産の1%未満であり、再生可能エネルギー・セクターの成長に飲み込まれる危機感がある。

スコットランドでは2022年8月、シェトランド漁業者協会が洋上風力発電プロジェクトの漁業への影響について“緊急調査”を求め、特に最も貴重な白身魚資源の2つの産卵場を指摘した。

同協会の代表者は、これらのプロジェクトが資源の産卵行動に与える影響は不明のままであり、産卵場が破壊される前に緊急の調査、分析が必要だと訴えている。

再生可能エネルギー業界は、これらの懸念の一部を和らげることの重要性を認識しており、“Hornsea 2”の開発事業者でありデンマークに本拠を置く電力会社“Ørsted”に英国最大の漁業会社“Young's Seafood”の資源管理担当元部門長“Cameron Moffat”を漁業分野対応部門長として招き入れた。

“Cameron Moffat”は“Young's Seafood”入社前、2年間、MSCで働いていた人物とされ、現在は、水産業界のM&Aの実態を指摘し、撤退の可能性のある漁業者との協力が、洋上風力発電所建設のプロセスを軽減する旨を説明、“Ørsted”社が漁業者へ補償を用意するために、真の影響を分析し、包括的な方法論を作成すると語り、両業界の運営を認めるための合意できる方法を見つけることが重要だと加えた。

一方、英国漁業団体連合会副代表“Mike Cohen”は、一部の風力発電事業者が漁業への懸念を真剣に受け止めているが、単に協力のアイデアを口先だけで言っている事業者もいると述べ、良好な関係を築くには、第3者機関の関与も必要があると言及、全ての関係者が海で生計を立て、誰もが何かを得ることが可能だと考えており、それを求めることが重要だと加えた。

 

 

(関連情報)

2022年09月26日 北海道新聞【室蘭】

[室蘭沖に洋上風力 経済界、市に誘致要請 漁業者、生態系の影響懸念]

室蘭港の沖合に洋上風力発電施設を誘致する案が浮上している。地元経済界は8月、国が支援する実証事業に名乗りを上げるよう室蘭市に要請。同港では洋上風力の部材製造の拠点化が進んでおり、実証事業を足がかりに、部材を造るだけでなく、風車のメンテナンスも含めた幅広い産業集積につなげる狙いがある。ただ、誘致に欠かせない地元漁業者との本格的な話し合いは始まっておらず、先行きは見通せない。

「沖合に洋上風力を誘致できれば室蘭港の長期的な活用を期待できる。雇用が生まれ、経済効果がマチ全体に及ぶ」。市内などの62企業・団体でつくる室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)の上村浩貴理事長は言葉に力を込める。協議会と室蘭商工会議所は、漁業者の理解を得て実証事業を誘致するよう、それぞれ市に要請書を出した。

誘致を狙うのは、国が脱炭素化を支援する「グリーンイノベーション基金」を使って来年度にも始まる「浮体式」の洋上風力の実証事業だ。指定されるには利用海域の沿岸自治体と漁業者、発電事業者などの合意が必要で、室蘭沖には複数の事業者が関心を寄せる。

室蘭港では洋上風力関連で企業の動きが続いている。昨年11月に大手ゼネコンの大成建設と五洋建設(ともに東京)が部材の製造拠点を置くと発表し、五洋建設の新工場は来月稼働する。今年7月には清水建設(東京)が洋上で風車を組み立てる大型作業船「SEP船」の母港に指定。こうした動きを受け、市は部材を維持管理する国指定の基地港湾に立候補している。

MOPAなどは、室蘭で並行して進んでいる水素活用にも洋上風力は貢献できると訴える。燃焼時に二酸化炭素が出ない水素は脱炭素の切り札の一つで、市は地元の陸上風力などの電気で作ったり、輸入したりした水素を市内や道央圏に供給する構想をもっている。洋上風力の大量の電気があれば水素を増産できるというのが経済界の筋書きだ。

ただ、室蘭市は慎重だ。実証事業の誘致の鍵は沖合に漁業権をもつ漁業者が握っているが、市は今月14日になってようやく室蘭漁協に、話し合いの前提となる勉強会を年内にも立ち上げると伝えた。同漁協は「洋上風力の沖合利用に賛成するわけではない」と強調した上で勉強会には加わり、風車が漁業に与える影響を検証する考えを示した

漁業者には洋上風力が海の生態系を脅かすとの心配がある。青森県では名産のマグロの回遊ルートが変わることが懸念されている。一方、長崎県五島市では風車の土台を魚礁にして漁業振興を図っている。再生可能エネルギーに詳しい室蘭工大大学院の木元浩一准教授(経済学)は「洋上風力は利害関係者が一体となる視点が必要」と指摘する。

洋上風力発電施設の誘致を巡っては、再エネ海域利用法に基づく「準備区域」に松前沖、島牧沖、石狩市沖、檜山沖、岩宇・南後志地区沖が選ばれている道内をはじめ、全国で自治体などの綱引きが激しくなっている。室蘭の経済界は市の動きの遅さを懸念しているが、来春に市長選や市議選を控える市幹部は「意見の分かれる問題には踏み込みづらい」と明かした。(山岸章利)

<ことば>洋上風力発電 騒音などが懸念される陸上風力よりも風車が大型で発電効率を上げられる洋上風力発電には、風車を海底に固定する「着床式」と、固定せず海上に浮かべた浮き(浮体)に風車を載せて風や波に流されないようチェーンといかりで海底につなぐ「浮体式」がある。日本には着床式に適した水深60メートル未満の遠浅が少なく、沖へ行くほど風況は良くなるため、将来は浮体式が主力になるとされる。

 

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