2012年12月18日
一般社団法人北洋開発協会
[日ロIUU漁業防止協定署名前後の輸入カニの激増とロシアの反応等の時系列]
2012年04月
同年9月のウラヂオストクでのAPEC首脳会議において日ロIUU漁業(密漁密輸)防止協定に署名がされるとの情報が現実味をおびて伝えられる。
*同年5月からロシアから日本への輸入カニが激増する(財務省貿易統計データ)。
2012年06月25日
韓ロIUU漁業(密漁密輸)防止協定において韓国へ輸出されるカニに原産地証明の取得が義務付けられる。
*日本から韓国へのロシア産とする原産地証明を添付したカニの輸出が激増する(財務省貿易統計データ)。2009年締結の韓ロIUU漁業(密漁密輸)防止協定は日本を経由した貿易を想定していなかったと思われる。
2012年06月27日-同29日
東京においてIUU漁業(密漁密輸)防止第9回日ロ関係省庁会議が開催される。
2012年09月08日
ウラヂオストクでのAPEC首脳会議において日ロIUU漁業(密漁密輸)防止協定が署名される。
2012年09月21日
ロシア漁業庁長官クライニーが記者会見を行い、日本に対し実効あるIUU漁業(密漁密輸)防止を求めると語り、日本の港の現状に懸念を表明。日本と今年6月にも問題が解決されたとの感があったが、実際には再び、密漁カニが日本の港へ大量に搬入されており、協定が批准され発効するまでの間の取り扱いについて、日本に対し働きかけをする必要があると語り、更に、状況に変化が生じない場合、日本漁船がロシア排他的経済水域で水棲生物資源を漁獲するための協定等、他の漁業分野の協定において日本が痛みを伴う可能性もあると示唆。
2012年10月15日
ロシア漁業庁長官クライニーが日本と韓国へ向けられる密漁密輸カニの“センセーショナルな証拠”をつかんだと発表し、この件で10月17日、記者会見を行うと広告。
2012年10月17日
ロシア漁業庁長官クライニーが、今秋、IUU漁業(密漁密輸)防止協定に署名したにもかかわらず、日本当局は、ロシアからの密漁密輸カニを防ぐための十分な対応をせず、日本の港を経由して韓国へ搬入される等の流通が増加していると語る。また、クライニーは、現在も毎月300-600トン、ロシア海域のカニが、カンボジア、ベリーズ、グルジア等の第3国船により密漁密輸されており、その背景に、日本が発給する書類を根拠に、日本を経由して韓国へ搬入される流通もあると指摘、署名した、ロシアと日本のIUU漁業(密漁密輸)防止協定が発効するまでの、この2-3ケ月間についても、日本当局は秩序回復のための対応を待つ必要はなく、今後、この問題が改善されない場合には、日本と韓国に対し、ロシア排他的経済水域における水棲生物資源の漁獲割当を与えない可能性があると言及した。
2012年11月12日
ロシア漁業庁は、同庁長官クライニーがモスクワにおいて、韓国の特命全権大使ウイ・ソン・ラクと会談し、IUU漁業防止に関する規制強化について協議したと発表した。
この協議の結果、韓国は2012年11月15日から、ロシア産のカニ(活・冷蔵・冷凍・その他)の輸入について、ロシア当局ばかりでなく、第3国の特定機関が発給する原産地証明の内容を、ロシア側へ通報することとなった。
*第22回韓ロ漁業委員会を円滑に進めるための韓国側の対応と考えられる。
2012年11月12日
モスクワにおいて第22回韓ロ漁業委員会が始まる。
2012年11月15日
日本水産庁が、ロシア産カニの日本から韓国への輸出手続きに必要な原産地証明書の発給を、これまでの商工会議所などに代わり、2012年11月16日から水産庁が行うと発表、同12日付で日本商工議所に連絡したと加えた。
2012年11月20日
モスクワで開催された第22回韓ロ漁業委員会は当初、2012年11月12日から同16日までの日程だったが、翌週の20日まで延長し、協議を続けたものの合意に至らなかった。
ロシア漁業庁は、2012年11月15日から、ロシア当局が発給する原産地証明があることを条件に韓国はロシア産のカニ輸入が可能となる規制が行われることとなったが、韓国側は、この制御に関する実際のメカニズムを示していないと指摘し、来年2013年の韓国漁業者がロシア排他的経済水域における漁獲割当を失う可能性があると、あらためて発表した。
2012年11月26日
東京において第29回日ロ漁業委員会が始まる。
2012年11月30日
釜山地方警察庁(外事課)が、所属の国際犯罪捜査隊が、2012年1月-7月24日までの間、ロシア船主がロシア水域で違法漁獲したカニ(タラバガニ等)を第3国(シエラレオネ)のペーパーカンパニー名義により原産地を変え、莫大な差益を得た流通業者など被疑者7人を検挙したと発表、事件の特徴として、韓ロIUU漁業防止協定により、ロシア水域で違法に漁獲したカニを韓国国内に輸入することができなくなり、対外貿易管理上の公海での取引規則を悪用し、運搬船と漁獲船の国籍に応じ、製品の原産地を虚偽表示したものだと指摘した。
また、加えて、ロシア産の大規模な密漁密輸カニの流通を防止するための活動を、ロシアFSBと協力し展開すると発表、ロシア産カニの韓国市場への供給の90%を、犯罪にかかわる集団が支配していると指摘し、自らの取締活動が、中断している韓国漁業者のためのロシア海域での操業漁獲割当交渉に貢献できることを期待していると言及した。
2012年12月07日
第29回日ロ漁業委員会の交渉が妥結する。
ロシア漁業庁は、東京において、1984年12月7日付ソビエト社会主義共和国連邦と日本の地先沖合漁業協定合意に基づく、第29回ロ日漁業委員会を終え、今年2012年のロ日両国漁船の相手国排他的経済水域における操業結果の報告と、来年2013年のお互いの操業条件に合意がなされたと発表した。
また、ロシア漁船が、食糧や燃料を補給するために釧路港に入港する条件に合意がされたことに加え、委員会では、今年2012年9月8日、ウラヂオストクにおけるAPEC首脳会談で調印された太平洋北西部の水棲生物資源の保護、管理を目的とする密漁密輸防止協定に基づく取り組みが協議され、開催期間中に、この問題に特化した臨時的な専門家会議も行われたと報告した。
さらに、日本側から、韓国への日本を経由した密輸カニの搬出への対応について報告があり、ロシアと日本は、ロシア産カニの密漁密輸防止のための協力に関する共通の認識を確認するに至ったと言及した。
*現時点において、今年2012年末、あるいは明け2013年1月早々とされる、第22回韓ロ漁業委員会再交渉にかかる日程設定に関する確認情報なし。
国際漁業対策事業部 原口聖二