2024年07月02日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内
一般社団法人北洋開発協会 国際漁業対策事業部 原口聖二
[ポスト英国EU離脱 2024年英国総選挙 保守党敗北に水産業は備えている]
明後日、2024年7月4日、英国の総選挙(下院)において14年ぶりに労働党が勝利する可能性が高いと調査結果を基に各ミディアが伝えており、スナク政権の保守党の敗北による変化に英国の水産業界は備えている。
現政権の保守党は、漁業分野の支援をイッシューに挙げ今回の選挙に臨んでいるが劣勢となっている。
保守党は今回の選挙において、長期的な持続可能性を構築し、シェトランド諸島からコーンウォールまでの沿岸ビジネスを成長させることで漁業部門を支援すると約束している。
マニフェストでは、英国漁業者のために9億7,000万ポンド(12億米ドル:11億ユーロ)以上の割当予算を確保したと主張している。
また1億ポンド(1億2,650万米ドル:1億1,810万ユーロ)の英国水産物基金による、港湾や水産市場の改修への投資、水産加工設備や技術の提供、水産養殖部門の支援策を提言している。
一方、勝利が予想されるスターマー率いる労働党は、今度の選挙は“変化”と“14年間の保守党政権からの転換”をテーマとするものだと主張している。
漁業、水産経済全般に直接言及していないものの、党のマニフェストでは、英国全土に変革をもたらす投資を行うために73億ポンド(92億米ドル:86億ユーロ)の国家基金を新たに創設すると強調している。
基金の概要には、英国全土の港湾の改修とサプライチェーンの構築に18億ポンド(23億米ドル:21億ユーロ)の割当が含まれている。
英国が独立を維持し、EUとの再統合を求めないことを保証する一方で、このマニフェストでは「英国企業が国際市場にアクセスできるよう、あらゆる手段を講じる」ことも約束している。
また、これを達成するために、労働党は、世界貿易機関(WTO)や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)などを通じて貿易協力の強化を推進し、貿易ルールや協定を国にとってより良く機能するよう近代化するための国際的な議論のイニシアティヴをとると述べている。
さらに、我々は関係をリセットし、欧州の友人、近隣諸国、同盟国との絆を深めるつもりだと言及、しかし単一市場、関税同盟、移動の自由に戻ることではないとし、不必要な貿易障壁を撤廃することで、英国とEUの貿易・投資関係の改善に努めるとしている。
このほか、自由民主党は、マニフェストの中で、持続可能性を漁業政策の「中心に据えたい」と提言している。
同党は、漁業者、科学者、自然保護論者が、分散化され地域化された漁業管理システムの中心に立つべきだと主張している。
イングランド・ウェールズ緑の党は、2030年までに英国国内水域の少なくとも30%を完全に保護された海洋保護区にすることを約束している。
同党は、国内の政治状況が好転し、EU加盟国が同意すれば、すぐにでもEUへの再加盟を目指すと述べている。
このほか、スコットランド民族党(SNP)もEUへの復帰を望んでいる。
英国現地時間2024年7月4日22:00(日本時間5日06:00)に出口調査の結果が公表され、最終結果は現地時間の5日07:00(日本時間15:00)に判明することになる。