2023年11月17日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2023年 ロシア水産物輸出 一連の制裁措置で数量増も金額伸びず]
ロシアは漁業生産量において世界第5位であり、その製品も国際市場において需要が確保されている。
この中にあって、スケトウダラ、ニシン、そしてタラが上位3魚種を占めている。
しかし、現在、水産物製品輸出数量が増加傾向にあるものの一連の制裁措置により金額は伸びていない。
今年2023年1月-10月、前年2022年同期比で輸出数量は11%増加しているが、金額ではわずか1%で、10%のラグが発生している。
一方で、競合他国製品価格は上昇しており、実質的にロシアの輸出価格は下落していると評価される。
これらの主な要因は、非友好国による制裁措置の影響といえる。
2022年7月、米国はロシア産水産物製品の輸入を全面禁止した。
2022年3月以降、EUはロシアの水産物製品輸出者リストを更新していない。
2022年7月、英国ではロシア産白身魚の輸入関税を引き上げ、35%を設定した。
また、2022年からEUとノルウエーはロシア船舶の入港を制限している。
更にEU理事会は、来年2024年1月に発効する自主的関税割当(ATQ)制度改定からロシアとベラルーシの水産物を除外することを提案しており、採択された場合、現在の免税ではなく、13.7%の標準関税が課されることになる。
ロシア産スケトウダラ製品輸出価格は2023年に10%下落している。
H&G(ドレス)はKgあたり1.2ドルから1.08ドル、フィレは3.65ドルから3.3ドルとなった。
ロシア産スケトウダラのフィレの輸出価格は、米国産同製品価格とのラグが顕著となっており、2022年、平均価格はロシア産が3%下回っていたが、今年2023年は19%開いており、kgあたりロシア産3.3ドルに対し米国産が3.9ドルとなっている。
スケトウダラのすり身価格はフィレほどのラグがないが、ロシア産2.2ドルに対し米国産が2.3ドルとなっている。
ロシア産水産物製品は、制裁措置による市場制限や物流不全により、海外市場において低価格での販売を余儀なくされ、今年2023年、平均輸出単価が10%低下している。
加えて、ロシア政府は、2023年9月21日付決定No.1538により、水産物を含めた広範な商品の輸出関税を、ルーブルとドルの為替レートに連動させて設定、同年10月1日からこれを施行することとした。
レートは1ドルあたり95ルーブルを超える時、輸出関税は7%となり、80ルーブル未満の時ゼロとなる。
この輸出関税設定は来年2024年末まで継続される見通しとなっている。
これらのことから、ロシア漁業分野については、さらに財務内容が悪化する可能性が指摘されている。