太陽だぁ! 大樹だぁ!
「さあ-、いらはい、いらはい 今宵の月は、よく切れそうだ! そうだ! あの太陽が近づき、大地の底がじわじわと熱くなってきた あの頃の文化的円熟は、どうなってしまったんだぁあああ」
「おい!太陽!よぉく聞け! 熟した僕たちは、そのまま腐り落ちたんだ! ザマアミロ! そのまんま、腐って、冷たいアスファルトの大地に、べっちゃり落ちて、 からからに干からびて、風に飛ばされ消えちゃったぁ~! ヘッヘッ!!! もう、そんなものは亡霊でしかありゃしねぇや! 現在は過去の歴史によって築かれるだとぅ! けっ! 過去なんてのは今が過去になった瞬間に死んでしまった今の亡霊でしかない! ああ、すると僕が死んだ時! 僕の人生はすべて現在の亡霊なのなら、死んだ僕、 現在を持たない僕は、いったい何なのだぁああ! きっと僕は、何でもない! 最初から僕は存在しないんだ! だから亡霊も存在しやしねぇえええええ! わかるか! そこの、ほおずきを、噛む女!!!」
女は、眩しそうに陽を見、ほおずきを鳴らし続ける! キュッ、キュッ、キュッ!
だから俺は、何をやっても良いのだぁ! 存在しない俺が何をやろうと、誰も気にしやしない! わかるかぁぁぁああ!」
すすきの枝を振り回しながら男に近づき指差して言ったぁあ! 「あんた。あたしの、指に触れて・・・」
あたしの血を感じるでしょ。 太陽の熱い日差しを感じるでしょう。 それは、あんたが存在してるからよ。 だから、あんたは何でもしていいわけじゃない。 あんたは、いつまでたっても私の奴隷よ。 私の言う通りに動く、私のお人形よ!」
男は、「うん」と、うなずいたぁあ!
男と女は道の遠方から、 ゆっくりやってくる1台の車に気がついたぁあ! 車の横窓には、風鈴が下がっていて、 それが、けたたましくゆれているぅうう!
「白痴の叫びぃいいいいいい!」
車は、ゆっくりと2人の前で止まったぁあ! ドアが開き、男の手が現れたぁあ! それは、義手だったぁああああああ! 「おい!あんたら、乗せてやるよ。 乗りたいんだろ。乗りな!」 男と女は無言のまま、その車に乗り込んだぁああ! そして車は出発したぁあああああ!
「運転手は、一つの義務を背負っている人間だ! それはヒッチハイカーを助けてやるという事だ! この俺でもね!義務は守るんだ! それが車を持った人間の社会モラルだ! それは俺が片腕でも、ちゃんと2本腕のそろった人間でも 同じ事だ!同じ事なんだ! いいか!お前ら! 片腕だろうが、かたわだろうが、そんなものは見かけだけなんだぜ! みかけさ!えっ!くぅえっ!ぷわっ! えっ、おい、何が大切か? 精神さ!モラル! 心の正しい道徳が一番素晴らしいものなんだ! 俺が、かたわだって、そんなものは、 精神の崇高さに比べたら何でもない! 俺は崇高な精神を持ってるんだ! ええっ、そうだろ!そりゃ肉体だってあった方がいい! でも肉体なんて、たかが知れてるんだぜ! 肉体は滅びる! だが精神は、違う! 肉体は動けない! だが精神ってやつは、どこへでも行けるんだぜ! この車みたいにな! はっは!」
「Mr.シフレット!」
「・・・何故、俺の名を知ってやがるんだ!」 女 もうそりゃ、カルトな文学少女の間じゃ有名ですわ! 何が道徳だよ、てめえ! 自分の母親も、女房も捨てておいて! この、かたわもん! あんたの母さんはブタの様に臭いんだ!」
ドアを開け放したまま車は疾走していったぁあ!
「ぢぐじょう!神サマ、今の世の中、まったく腐ってる!」
「ぎゃはははは!バカ糞野郎!」
「あんた・・・ひどい女だよぅ」
あんたに何ができる!? あんたは、いつも何も出来ないんだ! 何故? 何かやりゃ、すぐ自分に責任が付きまとって、それを追求される! そう思って、それが、怖くて、 お前にゃ、何もできやしないんだよ! この弱虫野郎!いじけ野郎!糞袋人間!」
「でも、あの、せっかく乗せてくれた人に、 あんな事、言うなんて! あんな・・・ひぃぃいいい-!」
さっきの元気は、どうしたのよぉぉぅぅぅうう! あいつにゃ、あれくらい言った方がいいのよ! そうじゃなきゃ、あいつは一生、自分だけしか愛せないわぁぁあ!」
空だぁあああ! 緑の木々だぁああああ!
すわってる白痴の少女がいたぁあああ!
「なんだ!あの娘!アホみたい!」
「きっと、本当にアホなんでしょう!」 ♀そして、それから女は、数年後に、さっき罵ったMr.シフレットに恐ろしくも残虐な復讐を受けたのでした。内蔵を引きずり出されて灼熱の大地にハリツケにされ死んでしまったとさ。 おわり
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kipple