続きです。
いっきに、現在の状況に飛びます。
令和4年2月23日(水)天皇誕生日。
9時40分妻と自宅を出る。
京成電鉄に乗り、総武横須賀線に乗り換え
戸塚駅に降りる。
改札口正面に花屋がオープンしてた。
仏花を買いロータリに回る。
私一人なら、舗装がひび割れた側道を4キロ歩くのだが
妻もいるのでタクシーに乗る。
正午に門前着。
私は樹林と墓石の間の石段をゆっくりと脚を上げる。
妻は骨折してリハビリ中なので境内で待つ。
墓石と椎の巨木と竹林を眺めている。
静寂の森の小山に石段に靴音が響く。
正安寺
人の気配に、樹林の枝から、キッ キッと鳥仲間が知らせる。
カラスが静かに旋回して、墓石のリスを狙っている。
襲うカラス、逃げるリス。
頂きはやせ細った尾根に縦列に墓石が並ぶ。
コートを突き抜ける冬の風とふり注ぐ陽光を顔面に受けとめる。
頂きが切れ落ちる崖の末端まで足を踏みだした。
人の気配に、樹林の枝から、キッ キッと鳥仲間が知らせる。
カラスが静かに旋回して、墓石のリスを狙っている。
襲うカラス、逃げるリス。
頂きはやせ細った尾根に縦列に墓石が並ぶ。
コートを突き抜ける冬の風とふり注ぐ陽光を顔面に受けとめる。
頂きが切れ落ちる崖の末端まで足を踏みだした。
真っ青な天空の視界に丹沢山塊の峰に雪が被さっていた。
気まぐれ雪富士は、一瞬、現れるが白雲に隠れる。
一人での親父の墓参りには、必ず煙草を頂きで吸うのだ。
生前、煙草を吸い続け、かなり肺を弱めていた。
紫煙を嗅がせるのだが、今日はお袋の納骨なので無し。
越後湯沢の温泉宿で客死した親父。
71歳のままで、三途の川の向こう岸で待ちわびているのだ。
41年が過ぎた。
11歳も年上だった親父を追い越して97歳の大姉として
お袋は親父の元へ戻るのだ。
母と3人息子の次男として出生。
気の強いお袋と意地っ張りの次男坊。
磁石のN極とS極だ互いに反発と接着を繰り返した。
母と子は反発しあいながらも離れることはなかった。
途切れることのなかった母と次男の確執と葛藤。
聞き耳を立てている墓石。
ぼんやりと佇む僕に
切り裂く怜悧な風の刃が肉体を通った。
母が、「お前 目を覚ませ」
叱ったのか。
時はまもなく午後1時。
本堂で遺骨の儀式は行われるのだ。
ゆっくり石段を下りると、
カラスとリスのバトルに真っ最中。
生きる抜くためには、ものみな苛烈な競争なのだ。
本堂の前にあんちゃんが立っていた。
残滓を捨て去る納骨日なのだ。
続く。
少年時代/山田姉妹