まーどんなぶろぐ

ただいま他所のSNSに外遊中。

■都響に明日はあるか

2004年10月11日 | 巷の話題
先日、在京オーケストラの定期演奏会を聴きに行った。円熟味を増した有名邦人指揮者が人気のあるチャイコフスキーの交響曲を振るプログラムだけあって客席はほとんど埋まっていた。

現在、東京にはプロのオーケストラが9団体ある。放送局、新聞社等のスポンサーがついているNHK交響楽団読売日響、そして都の外郭団体の東京都交響楽団(都響)。それ以外は自主運営団体で設立順に東京フィル東京交響楽団日本フィル新日本フィル東京シティフィル東京ニューシティ管弦楽団とならぶ。それにしても数が多い、申し訳ないが後発組は名前さえきちんと覚えていなかったくらいだ。各楽団とも自主公演のほか、オペラ・バレエ公演、音楽教室などの請負演奏会を数多くこなすなどの努力はしているが、9つものオーケストラがひしめき合っていて経営が成り立つのだろうか。

楽員の年収を比べた場合、スポンサー付のオケの方が自主運営組より高いのは確かなようだ。日経新聞記事(10.09.夕刊)によると、40歳の楽員の標準年収は最も恵まれているN響で1,000万円弱、ついで読売日響の約750万円であるのに対して、日フィルや東フィルは400万円強程度だ。新聞記事で問題となっていたのは、都からの補助金が支給されている都響の場合だ。

都響楽員の年収(40歳、平均額)は700万円で自主運営組よりはるかに高い。財政再建の一環として人件費の抑制、年功序列給与の見直しを打ち出している都の指導で楽団側は昨年「終身雇用制を2年ごとの期間契約制に改め、力量の査定も厳格に行う」方針を打ち出した。「都知事自ら給与を削り、都立高校の教諭にも教育委員会の査定が導入される中、都響の楽員も『税金で運営されている』との自覚を持ち、安くて良いものを提供する努力を怠ってはならない」という都側の主張はもっともだと思う。

これに対して楽員組合である都響ユニオンは、すんなり提案を受け入れるわけもなく「年俸制の導入や退職金の手直しも含め、都と財団、楽員の間で一定の合意に持ち込みたい」としているが、「オーケストラ団員の給与は一般サラリーマンに比べて高いのか安いのか、契約更改の前提となる“腕”の査定に合理的基準を設定できるのか」など容易には答えが出せない難題を抱え、交渉も難航しているということだ。同組合の公式サイト都響ジャーナルでは 、聴衆や都民に理解と支援を訴え続けている。

雇用確保の観点からユニオン側が必死になるのは当然だが、どこか釈然としない。都響のオフィシャルサイトに載っている楽団の活動内容をみると、「現在の主な演奏活動として、定期演奏会、プロムナードコンサート、東京芸術劇場シリーズ、特別演奏会などの主催公演をはじめ、都響三宅島支援チャリティコンサート、都響と高校生とのジョイントコンサート、オペラ公演、レコーディングなど年間130回に及ぶ公演を行っている。」と書いてある。これを読む限り、他の自主運営オケの活動内容とあまり変わらない。自主運営オケでも、○○支援コンサート、青少年育成プログラムなど積極的に取り組んでいる。いや、自主運営組の方が規制に捉われず、新たな方向性を模索している点では上をいっている。はたして今の時代、都が税金を使ってオーケストラを運営させている必要があるものだろうか。そろそろ楽団側も都の庇護から離れて運営していこうという意識を持ってもよいのではないかと思う。

日経新聞(2004.10.9.)夕刊:「オーケストラ楽員に嘆き節」より