巷で話題のドン・キホーテ、店の看板は 『ドン.キホーテ』 となっていて、原語の 『Don Quijote』 の通り、”ドン” で区切れていますよね。 しかし通称は 「ドンキ」 というそうじゃないですか。 何でも省略すればいってものじゃないでしょ、なんていうとオババ扱いされそうですが、今日は「名まえ」のおはなし。
そもそも、”ドン”というのは、スペイン語では高貴な人の敬称のひとつで、 ”ドン・カルロ” ”ドン・ファン” などで見聞きしますね。女性の場合は、”ドンナ・アンナ” とか ”ドンナ・レオノーラ” のように ”ドンナ” になります。
と書いていて、ハッと気づいたのですが、ドン/ドンナの後にくるのは
姓ではなく名だということ、つまり「キホーテ」は苗字でなくファースト・ネーム だったわけです。
外国人の名前については、他にも言われて気づく…、ことがいろいろあります。
例えば、
Leonard da Vinci 、レオナルドがファースト・ネームなのはわかりますが、苗字は…ないんです。ダ・ヴィンチというのは 「ヴィンチ村の」 という意味で、日本流にいえば 『森の石松』、『番場の忠太郎』 と同じこと。
参考までに、フィレンツェからピサに行く国道の途中に「ヴィンチ村右折」という道路標識があり、その村がレオナルドの生まれ故郷です。
次はオランダ人。 サッカー・オランダ代表チームのメンバーを見ていると、まずは新監督の
Van Basten 以下、
Van der Vaart 、Van Nistelrooy (ファン・バステン、ファン・デル・ファールト、ファン・ニステルローイ) …、やたらと ”Van ” がつく人が多いと思いません?
これらは、出身地、職業、父の名などから、○○村の~、××屋の~、△△の息子の~、とこじつけたものですが、オランダの場合は19世紀前半のナポレン統治時代、(ナポレオン法典に則って)苗字の登録が義務付けられた際に、こういうお座なりの苗字をつけた人が多いのだそうです。
ちなみに、ココア・メーカーの
Van Houten (ヴァン・ホーテン)や、アメリカン・ハードロック・バンドの大御所
Van Halen (ヴァン・ヘーレン)は、オランダの名前を英語読みにして世界ブランドとなってるということです。
最後にユダヤ人。アカデミー賞受賞の名作 『
ベン・ハー』 という映画がありましたね。チャールトン・ヘストン演じるユダヤ人、ユダ・ベン・ハーの波乱万丈物語です。この主人公は、姓はベン・ハー、名はユダ。
他に思いつく有名人がいないのですが、ユダヤ人にはこの "ベン" がつく人が多いそうです。「ベン」 はヘブライ語で 「息子」 と言う意味で、「ベン・ハー」 は 「ハーさんちの息子」という意味になります。”ベン” は名ではなく姓の一部ってことです。
このように見ていくと、言語や風習が異なっても苗字というのは、案外と単純な発想から出来上がっているものなのだな~、と思います。 日本でも、周囲に田んぼがあったから…田中さん、山のふもとに住んでいたから…山本さん、と決めたのかもしれません。