ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

再生医療で期待される「ミューズ細胞」

2021-03-26 10:25:14 | 健康・医療
軽い怪我をしてもほっておけば自然に治ってしまいますが、この時活躍するのが東北大学が見出した「ミューズ細胞」のようです。

この細胞を利用した画期的な再生医学の薬剤が、開発されつつあり、早ければ2022年度に製造販売が承認される見込みです。

ミューズ細胞は様々な細胞に分化する幹細胞の一種で、誰の身体にも存在する自然の細胞です。脳梗塞や心筋梗塞といった重大な疾患の時には、もともと体内にあるミューズ細胞だけでは数が少なく修復することはできません。

そこでミューズ細胞の製剤を外から投与して障害を修復できるように数を補充することになります。ミューズ細胞の製剤はどの疾患でも、仕様や基本的な治療法が変わりません。

現在行われている治験では、ドナーから採取し培養して数を増やしたミューズ細胞製剤の15ml(約1500万個の細胞)を希釈して52mlにしたものを、点滴で15分ほどかけて投与するだけです。

体内に入ったミューズ細胞は血液の流れに乗って、損傷した臓器や組織に自動的に集まりその修復を始めます。このようにどんな疾患も点滴するだけで済むのは、ミューズ細胞が再生医療実現に有利な特性を備えているからです。

まず腫瘍性が全くなく安全性が高く、次に分化誘導の必要がありません。ES細胞やiPS細胞は移植前に分化誘導する必要がありますが、ミューズ細胞は自然に損傷個所の細胞に分化する性質を持っています。

さらに外科手術が不要で、最後にドナーの細胞を使うにもかかわらず免疫抑制剤を必要としません。こういった特性から作り置きをしておいて、必要なタイミングで迅速に提供することができます。

現在は急性心筋梗塞を始めとして、脳梗塞、脊髄損傷、表皮水泡症、新生児低酸素性虚血性脳症という五つの疾患で治験が進められています。さらに今年1月には新たな疾患として、筋委縮性側索硬化症(ALS)の治験が始まりました。

ALSは治療法が確立されていない難病であり、患者は過酷な闘病を強いられています。ミューズ細胞は主に急性障害に効きやすいとされてきました。ミューズ細胞が損傷部位に集まるためのシグナルの役目を果たす物質は、急激に細胞が壊れていく疾患ほど多く放出されるためです。

その点ではALSは進行性の慢性疾患ですが、岡山大学の研究グループがマウスを使った実験で、ミューズ細胞が進行を遅らせる効果があることを確認しています。

このようにミューズ細胞の培養細胞を点滴で投与するだけで、脳梗塞の脳の損傷などが修復されるのであれば、画期的な再生医療と言えます。

一度壊れると修復できないといわれている脳細胞などが、ミューズ細胞によってどこまで復活することができるのか、この臨床試験の結果が注目されます。

加齢で筋力が低下する「サルコペニア」

2021-03-25 10:25:07 | 健康・医療
コロナ禍で自粛生活も長くなり、特に高齢者では運動不足に陥りがちです。

加齢などにより筋肉量が減り、全身の筋力が低下した状態を「サルコペニア」といい、転倒や骨折のリスクが高まるだけでなく、生活習慣病などにつながることもあります。

サルコペニアはギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ」と喪失を表す「ぺニア」を組み合わせた造語です。医療や介護に頼らず日常生活が送れる健康寿命を考えるうえで注目されています。

ヒトの筋肉は古い筋肉が壊れる「分解」と新しいものが作られる「合成」を繰り返していますが、栄養や運動が不足すると、分解が合成を上回り筋肉量が減少してきます。筋肉量は30歳ごろをピークに毎年1〜2%程度減少するといわれており、加齢と栄養不足がこれを加速するわけです。

筋肉量が減少すると、体のバランスを保つ力が衰えて転倒しやすくなり、骨折のリスクが高まります。糖の代謝を調整する機能も影響し、血液中の糖が増えて糖尿病のリスクも高まります。

さらに喉の筋肉がやせ細り食べ物を飲み込む嚥下機能が低下することもあり、栄養状態の悪化で免疫が低下し感染症にかかりやすくなります。この筋肉量が減っても内臓脂肪は多いサルコペニア肥満というケースもあり、見た目だけではなかなかわからないようです。

日本サルコペニア・フレイル学会の診断基準では、握力が男性28キロ未満、女性18キロ未満、椅子から立ったり座ったりを5回繰り返すのに12秒以上かかる、というどちらかの場合、サルコペニアの疑いがあるとしています。

検査装置を備えた病院で筋肉量を調べ、一定の数値より低いことが確認されれば、サルコペニアと診断されます。予防のための食事は当然ですが筋肉を作るためのタンパク質を取ることが重要です。

ビタミンDを一緒に摂取すると、筋肉量がより効率的に増えるようです。サルコペニア外来がある病院では、タンパク質がどの程度足りないか尿検査で調べることができます。筋肉量を増やすには、運動の際に十分な栄養を取ることが必要です。

スクワットや座った状態で立つことを繰り返す運動などの筋トレを週2回程度行うと効果があります。コロナ禍で自宅に閉じこもり運動の機会が減っても、家の中で可能な範囲で体を動かすことが良いようです。

私自身は歳をとり体が動きにくくなってきたのは確かですが、まだサルコペニアというほどにはなっていないと思っています。それでももう少し家の中での運動をした方がよいのかもしれません。


双方が利益を得る共生、相利共生とは

2021-03-24 10:03:07 | 自然
自然界には多くの共生関係が存在しており、ヒトの腸内の多くの微生物とも共生関係といえるようです。

ここでは主に送粉者と呼ばれる花粉を運ぶ動物と植物の共生についての記事を紹介します。「相利共生」とは異種の固体同士が双方にとって利益となるように、厳密で持続的な関係を持ちながら生活することと定義されています。

共生とだけ言った場合は、必ずしも双方が助け合うと限りません。片方のみが利益を得て相手が害を受ける「寄生」や、片方が利益を得るだけの「片利共生」なども広い意味での共生です。

ハチやチョウといった送粉者は、花から蜜を吸うときに花粉を体につけ、花粉を他の植物の元に運び繁殖を助けます。送粉者はお腹を満たし、植物は生殖できるといった関係が相利共生です。

この戦略は大いに成功を収めており、17万種の植物と20万種の動物が関わっており、世界の穀物生産量の35%に寄与しているとされています。このために進化してきた植物と送粉者もいるようです。

例えばハチドリの多くは、特定の花の形に合うようなクチバシをもっています。またハチを呼び寄せる花もあり、アピフェラというランの花はメスのハチの姿に擬態しています。このランは自家受粉することもできるため、ハチがいなくても存続でき、この関係は「条件的相利共生」と呼ばれています。

インド洋のサンゴ礁に住むホンソメワケベラは掃除魚として知られています。近寄って来る大きな魚たちの口やえらの中にいる寄生虫を食べますが、甲殻類なども食べるため、この関係もやはり条件的相利共生となります。

これに対しイチジクとイチジクコバチの場合、互いに相手がいなければ存続できない「絶対的相利共生」と呼ばれる関係にあります。イチジクには約750種ありますが、それぞれが特定のイチジクコバチを送粉者としています。

雌のイチジクコバチは、イチジクの中に卵を産み付けます。孵化した幼虫はイチジクを食べて育ち、翅をもたないオスがメスを受精させます。そうしてメスたちは体に花粉を付けて別のイチジクまで飛んでいき、そこに卵を産んで一生を終えます。

ハチが発生するはるか昔は、植物は花粉の媒介を風に頼る「風媒」という方法で繁殖していました。花粉がちょうど良い場所に落ちることを期待するしかないため、あまり効果的ではなくもっと良い戦略が進化しました。

こうして植物と動物の相利共生が出来上がったわけですが、こうした自然の営みというのは本当に面白いと感じています。進化というのは突然変異によりますので、目的をもっての変異はありません。

あくまで多くの変異者の中で有利となるものだけが生き残るという、時間のかかるものです。現在も進化は進んでいますが、人が確認することはできないという点も面白いのかもしれません。

帯状疱疹が引き起こす激痛と顔面麻痺

2021-03-23 10:25:26 | 健康・医療
帯状疱疹についてはこのブログでも取り上げてきましたが、身体の皮膚に疱疹ができるものが一般的と思っていました。

ところが耳に鉛筆を刺されたような激痛が走り、その後顔面麻痺が引き起こされる様なケースがあるという記事が出ていました。どうも帯状疱疹の4分の1程度は三叉神経領域つまり顔に生じ、それほど珍しいことではないようです。

横浜市の林市長もこの病気にかかり、入院されたようです。この三叉神経節の帯状疱疹の痛みはかなりひどいもののようで、その後顔面神経麻痺や聴神経障害出ることを「ラムゼイハント症候群」と呼びます。

ラムゼイハント症候群は、子供のころにかかった水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因で、帯状疱疹に伴う「顔面神経麻痺」などが現れる病気です。主な症状は顔面神経麻痺、耳の帯状疱疹、聴神経症状(めまい、難聴など)で、これらの症状は2-3日の間に順次出現してきます。

余談ですが私も10年ほど前に顔面神経麻痺になったことがあります。もちろん帯状疱疹とは無関係の突発性でしたので、何の痛みもありませんでした。顔に違和感があり、調べたところ左半分が全く動かなくなっていました。

すぐに神経内科のクリニックに行きましたが、自然に治ることが多いと何か薬を処方されました。困ったのは左目が閉じなくなってしまったので、目が乾き涙が出てしまうためしばらく眼帯をかけていました。

幸い1か月もかからず治り、普通に動くようになりましたが、結局原因は分かりませんでした。

さてラムゼイハント症候群は、早期治療をしないと年単位で症状が消えないことが多いようです。問題は帯状疱疹が口腔内にできた場合で、専門医でない医師や歯科医師では診断できないことが多いとされています。

三叉神経領域が帯状疱疹に罹患して口腔内に症状が生じた場合、皮膚の疱疹と異なり歯肉、粘膜の疱疹が生じていることが認識されず、帯状疱疹に罹患したことに気づけないことが多くなります。

こういったケースでは予後は不良で、約7割で顔面神経麻痺の後遺症が残ってしまいます。治療法は抗ウイルス薬が開発されていますので、早期治療により重症化を防ぐことができます。

ただし治療効果を得るには、疱疹出現後3日以内の早期投与が望ましく、遅くとも5日以内に投与を開始する必要があるようで、遅れると帯状疱疹後神経痛を予防できないとしています。

この帯状疱疹にはワクチンもあるようですが、あまり知られていませんので接種者は少ないようです。帯状疱疹は高齢者はよく発症するようですが、こういった後遺症的な状況にならないような知識も必要なのかもしれません。

新型コロナの後遺症には「血栓」が関与

2021-03-22 10:26:45 | 健康・医療
2カ月半も続いた緊急事態宣言が首都圏でやっと解除されました。どうしてもオリンピックを開催したい政府や関係者は、これ以上の宣言延長は聖火リレーの実施も難しくなりさらに延長することはできなかったのでしょう。

既に国民は「宣言慣れ」をしており、緊急事態という感覚がなくなり、効果があまり出ていないというのが実情ではないでしょうか。私はこの状況ではオリンピックは中止すべきと考えています。

さて日本ではコロナの感染者が45万人を超えていますが、死亡者は8800人強で欧米と比べると大幅に少なくなっています。しかも死亡者は70歳以上の高齢者が90%近くを占めており、ほんどが基礎疾患などのいわば関連死と分類されるものではないでしょうか。

ほとんどが軽症か無症状で回復していますが、後遺症を訴えている人は増えているようです。この後遺症の一因として考えられるものが「血栓」という記事が日刊ゲンダイに掲載されています。

国立国際医療センターの調査によると、退院したコロナ患者の約76%が後遺症を訴えています。症状は「倦怠感」が最も多く、そのほか気分の落ち込み、思考力の低下、頭痛、息苦しさ、身体の痛み、不眠、動悸、食欲不振、嗅覚障害、脱毛、味覚障害など多岐にわたっています。

新型コロナの患者は、血管内で血液の塊が生じる「血栓症」が起こっている割合が明らかに多いようです。この血栓が体内のあちこちの血管に詰まって血流が悪化することで、倦怠感などの後遺症につながっているとしています。

新型コロナ患者に対し、血栓症の診断時などに用いられている「Dダイマー」の測定を行うと、大きな血栓があるレベルの高い値を示すケースが多くなっています。

Dダイマーは凝固反応によって生じた血栓が分解された際にできる最終的な分解産物で、体の中のどこかに血栓があると高くなります。正常値は1.0とされていて、10.0以上であればエコー検査などを行い血管内に大きな血栓があるかを調べます。

新型コロナでは入院する段階で5〜10の患者が多く、中には30〜40というケースもあるようです。しかしエコー検査を行うと大きな血栓は見当たらず、脳をはじめ全身の微細な血管に小さな血栓が多く生じていると考えられます。

新型コロナでなぜ血栓ができるかについては、サイトカイン、血管内皮障害、ウイルスのS抗原自体が血栓を呼びやすい構造をしていることなどが考えられています。このため血栓の形成を防ぐ抗凝固剤を使った治療も行っているようです。

このような新型コロナと血栓の関係は知りませんでしたが、高齢者の患者は脳梗塞を起こしやすいというのも血栓が関係しているのかもしれません。

まだこの血栓については詳しいところは分からないようですが、今後の治療や後遺症の低減には血栓治療が重要となりそうです。