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ノーベル生理学・医学賞はmRNAワクチン開発に

2023-10-05 10:33:23 | 時事
今年もノーベル賞の時期になりましたが、医学・生理学賞は残念ながら日本人の受賞とはなりませんでした。

今回はmRNAワクチンを開発したドイツのバイオ企業の顧問でペンシルバニア大学の客員教授であるカラリン・カリコ氏ら2名に決定しました。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け実用化した「mRNAワクチン」の立役者となった点が評価されたようです。

私はこのmRNAワクチンには若干疑問を持っていました。mRNAはかなり不安定な核酸ですので、人体に投与した際すぐに分解されてしまうのではないか、またこれが本当に翻訳されてコードするタンパク質が生産されるのかなどが心配でした。

mRNAはDNAと同じ核酸の一種で、生体内のタンパク質の設計図となっています。DNAに書かれた遺伝情報を基に、タンパク質合成時に中間体として働きます。人工合成したmRNAを細胞に導入すれば、ワクチンなどに利用できるとの期待が、1980年代に高まりました。

しかしmRNAを細胞に導入するだけでは、そのmRNAを異物として認識する免疫反応で強い炎症が起こってしまいます。こういったことでワクチンの実現は困難視されていました。

カリコ氏らは、2005年にmRNAを構成する物質のひとつを、原子の種類は同じだが構造の違う「異性体」に置き換えることで、免疫反応を避けられることを発見しました。この置き換えにより、mRNAを鋳型にしてできるタンパク質の生産量が上がることを明らかにしました。

こうした基礎研究の成果が新型コロナウイルスのワクチンとして、現在世界中で使用されているmRNAワクチンの開発の土台となったようです。新型コロナの遺伝情報が判明すると、1年足らずという異例の短期間で高い効果を示すワクチンが実現し、世界に普及しました。

この異性体がどんな構造なのか調べていませんが、非常に素晴らしい発見であり興味深いものです。mRNAワクチンは、ウイルスの表面にあるスパイクと呼ばれる突起の設計図であるmRNAを投与するものです。

体内ではスパイク部分だけが作り出され、抗体が大量に作られます。これによりウイルスが入ってきても抗体が攻撃し、感染や発症、重症化を防ぎます。ウイルス自体は不要で、遺伝情報を基にワクチンを作れる利点が大きいようです。

受賞者の業績というより、ワクチンの説明のようになってしまいましたが、これだけ世界中で使用されたmRNAワクチン(私もこれです)の基礎研究ですので、今年度のノーベル賞を受賞されて当然のような気がします。


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