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ガンを促進させるタンパク質発見

2018-04-16 10:44:06 | 健康・医療
イタリアとイギリスの研究チームが、免疫細胞の機能を抑制するだけでなく、腫瘍の成長を促進させるタンパク質を特定したと発表しました。

このタンパク質を不活性化させる薬を開発できれば、ガン治療に新たな希望が出ると期待されています。

このタンパク質は「ERK5」といい、細胞外シグナル調節タンパク質キナーゼの1種で、腫瘍の成長の原因となるタンパク質としています。ERK5は今回見出されたものではなく、非常に古くから知られており、名前のように他のタンパク質をリン酸化により活性化する重要なタンパク質と考えられていました。

主な作用は細胞外シグナルに応答して細胞核に移行し、個別の転写因子をリン酸化して活性化することで遺伝子発現を調整します。マウスでは、ERK5遺伝子欠損により血管や心臓発生の欠損が生じ、胚性致死につながるようです。

またERK5が内皮の機能や血管の統合性維持に非常に重要であることが示されています。今回免疫系を含む腫瘍との関連が明らかになりました。

腫瘍が人体の内部で成長しようとすると、免疫系が有害な変異細胞を排除しようと試みます。しかし場合によってはうまく排除することができず失敗してしまうことがあるのです。それどころかリンパ球の一種で体内を循環するT細胞や、白血球の一種で組織レベルで存在する単球、マクロファージといった免疫細胞が腫瘍を育てる側になることもあるといいます。

腫瘍によって機能を抑制され、正真正銘の「ガンのアシスタント」に変身させられてしまうのです。マクロファージアは、健康な細胞が腫瘍になるときに発達するガン微小環境(腫瘍の周囲に形成され、腫瘍の発達を助ける細胞や血管などを指します)で再プログラムされる可能性のある細胞といえます。

この行動のメカニズムをコントロールしているのがERK5タンパク質で、マクロファージを腫瘍の仲間にして、その成長と悪性の度合いを促進しているようです。

研究者たちによると、ERK5を特定できたおかげで、将来このタンパク質を標的として腫瘍の成長を不活性化できる薬を作れるかもしれないとしています。

マウスを使った実験では、ERK5を除去しマクロファージの数を減らして腫瘍促進作用をブロックすることにより、腫瘍の成長を止めることに成功しています。

研究チームによると「ERK5タンパク質を除去する治療を通して、腫瘍になる前の段階でマクロファージを攻撃することが、将来ガン治療の新たな戦略となるかもしれません」と述べています。しかしこのERK5の重要な機能を考えると、選択的に阻害するのは難しいのかもしれません。

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