ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

膀胱ガンのマイクロRNA医薬による治療

2021-12-14 10:25:09 | 健康・医療
高齢になると色々な臓器にガンが発症しますが、やや難治性のガンとして膀胱ガンが挙げられます。

手術以外に治療法がなかったのですが、岐阜大学発のベンチャー企業が「マイクロRNA」による治療法に取り組んでいます。

膀胱ガンは国内で年間約2万3000人(男性が1万8000人)が診断され、約9000人が亡くなっています。60代以上の高齢者に多く、国内ではこの30年で患者数が4倍に増加しています。

膀胱は内側から粘膜上皮、粘膜下層、筋層、脂肪組織の4層の構造となっており、ガンの浸潤の仕方によって診断結果が大きく2種類に分かれます。

粘膜上皮表面に悪性腫瘍ができるか、もしくは浸潤したとしても粘膜下層までなら早期ガンであり、膀胱ガン患者の75%がこの段階で発見されます。

早期の場合、内視鏡手術とBCGの注入による治療が行われますが、そのうち60%でがんが再発し結局は膀胱の全摘出手術に踏み切らざるを得ない「進行ガン」となってしまいます。進行ガンは内側から3番目の筋層や最も外側の脂肪組織までガンが届いているケースをいいます。

進行ガンの全摘手術では、単に膀胱だけを切除するのではなく、男性なら前立腺や精嚢、女性なら子宮や尿道、膣前壁など、隣接する臓器や器官も同時に摘除する必要があります。このため患者のQOLが著しく低下してしまうことになります。

この膀胱ガンを早期の段階で治療できる可能性がある療法として期待されているのが「核酸医薬」です。抗ガン剤としては、ガン細胞と正常細胞の区別をつけて、ガン細胞だけに効果を表す「分子標的薬」に分類されます。

マイクロRNA医薬は、生命活動の根幹をなすセントラルドグマの工程において作用する小さなRNAを活用します。セントラルドグマとはDNAから必要な情報だけをmRNAに転写して、それを設計図としてさまざまなタンパク質に翻訳する工程のことです。

マイクロRNAは、mRNAからタンパク質が生産される際に働きかけを行う、重要な存在です。ヒトのマイクロRNAは3000種類以上あり、そのうちの10%の300種がガンや疾患と関連していることが分かっています。

この企業はそのなかで「miR-143」というマイクロRNAに着目しました。膀胱ガン以外でも共通して減少するのがmiR-143で、この発現が低下するとガン遺伝子といわれるRASなどのガン促進タンパク質のネットワークが形成されます。

そこでmiR-143を外部から補充すると、ガンを抑制できることになります。miR-143の安定性を高めるため化学修飾を施し、それをがん病巣に送り届けることができるようにナノカプセルに封入し、核酸医薬「ラスミヤ143」を作製しました。

まだ前臨床の段階ですが、モデルマウスに投与したところ、有意に膀胱内の腫瘍が減少することが確認できたとしています。実用化には時間がかかりますが、新しい分子標的薬として期待がもてそうな気がします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿