ごっとさんのブログ

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新型コロナで医師も信じた「イベルメクチン」神話

2023-08-04 10:33:03 | 健康・医療
いまさらの感がありますが、新型コロナのパンデミックの初期のころ、駆虫薬である「イベルメクチン」が有効であるという話しが広まりました。

私の仲間内では、この開発者である大村先生と若干つながりがありましたので、この噂を信じたというよりは真実であることを期待しました。日本の医師も実際に投与して、コロナ患者が治ったというような報道もされるようになりました。

しかしここには「クスリの有効性」の複雑さが存在するのです。一般に新薬の開発のための臨床試験を行うと、薬の種類によって差はありますが平均値としては60%程度の有効率で承認されます。

この薬をクリニックで100人に処方すると、理論的には40人には効果が出ないことになります。しかし100人中40人が効かないとなったら、この医師はヤブ医者という評判が立つでしょう。実際はそんなことにはならず、多分90%以上の人が良くなるという結果が出るはずです。

これはよく効く新薬という事で処方されると、そのプラセボ効果(私の好きな現象ですが)で治ってしまうのです。特に新型コロナのようなウイルス感染症は、何もしなくても免疫で治る病気ですので、効果がない薬でもそれなりの高い有効率が出ると考えられます。

新型コロナのパンデミック初期には、何の治療薬もない恐ろしい病気という認識がありましたので、既存薬を使ってみようという下地があったような気がします。

さてイベルメクチンが新型コロナに有効であるというのは、ペルーでの予防効果という事になっています。ペルーでイベルメクチンを配布した地域で、感染者数や死亡率が大幅に低下したという報告でした。

疫学の専門家はデータの信憑性に欠けると一蹴するところですが、一般の人にとってペルーのエピソードはドラマチックで分かりやすいものでした。また2020年4月には、オーストラリアからイベルメクチンで48時間以内に新型コロナウイルスがほぼ死滅したという研究も公表されました。

実際の日本での臨床試験では、北里大学が2020年8月から248人のコロナ患者を対象にイベルメクチンの治験を実施しました。結果としてイベルメクチンとプラセボを投与した2つのグループを比較しましたが、新型コロナのPCR検査が陰性になるまでの期間に差はありませんでした。

その後行われた臨床試験でも効果は実証されず、イベルメクチン神話は崩壊しました。なぜこんな神話が生まれてくるのかはいろいろな検証がされていますが、特段のことはなく単に多くの医師を含む人が治療薬を望んでいたという事のようです。

やはり薬については、しっかりした裏付け後に使用するという事が重要といえるでしょう。


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