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悪性脳腫瘍へのウイルス療法でよい効果

2022-08-06 10:27:35 | 健康・医療
現在はウイルスが原因の病気として新型コロナはもちろんサル痘なども問題となっており、ウイルスは当然敵として扱われています。

しかしウイルスの細胞に入って殺してしまうという性質を利用し、ガン細胞を治療するという研究も進んでいます。

東京大学医科学研究所などの研究チームは、ウイルスを使ってガン細胞を破壊する治療薬「テセルパツレブ」を使った、悪性度の高い脳腫瘍の患者19人に対する医師主導治験の結果を発表しました。

治療開始後の1年生存率は84.2%で、従来の14%より高い割合となりました。研究チームが開発したテセルパツレブは、口唇ヘルペスの原因となる「単純ヘルペスⅠ型」というありふれたウイルスを改変したものです。

ガンウイルス療法とは、ガン細胞のみで増えることができるウイルスを感染させ、ウイルスが直接ガン細胞を破壊する治療法です。

ウイルス療法では遺伝子工学技術を用いてウイルスゲノムを「設計」して、ガン細胞では良く増えても正常細胞では全く増えないウイルスを人工的に作って臨床に応用します。

ガン細胞だけで増えるように工夫された遺伝子組み換えウイルスは、ガン細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、その過程で感染したガン細胞を死滅させます。増殖したウイルスはさらに周囲に散らばって再びガン細胞に感染し、ウイルス増殖、細胞死、感染を繰り替えしてガン細胞を次々に破壊していきます。

一方正常細胞に感染した遺伝子組み換えウイルスは、増殖できないような仕組みを備えているため、正常組織は傷つきません。ここで用いた単純ヘルペスウイルスⅠ型は、ガン治療に有利な特徴を多く備えています。

主な特徴として、1)人のあらゆる種類の細胞に感染できること、2)細胞を殺す力が比較的強い事、3)抗ウイルス薬が存在するため治療を中断することができること、4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が下がらないことなどです。

3つの遺伝子を改変した今回のウイルスは、既存のガン治療用ウイルスに比べて安全性と治療効果が格段に高くなっているようです。

2015年から始まった医師主導治験では、脳腫瘍の一種「悪性神経膠腫」でその中でも最も悪性度が高い「膠芽腫」の再発・残存患者を対象にしました。治験では20〜70代の19人の患者にテセルパツレブを最大6回、腫瘍内に投与しました。

薬の治療開始後の1年生存率は84.2%で、19人の生存期間中央値は20.2か月でした。この病気の患者は大部分が1年未満で亡くなってしまうのに対し、1年半以上となったのは良い成果といえますが、良い治療といえるのかは微妙な感じもします。

患者にとっては生存期間が延びるのではなく、完治することを期待しているわけですが、難しい病気の治療の1歩といえるのかもしれません。


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