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脳の大きさが変化するアリ

2021-05-12 10:59:39 | 自然
アリは集団生活を営み、完全な分業が成立していたり調べるといろいろ興味ある事実が出てくるようです。最近では働きアリの一部は、通常全く働いていないというような事実も分かってきました。

ほとんどの種類のアリのコロニー(集団)では、繁殖できるのは1匹の女王アリだけとなっています。インドクワガタアリという種類のアリでは、面白い女王の交代があるという記事が出ていました。

女王アリが死ぬと働きアリたちが戦いを繰り広げ、勝者が新たな女王となって卵を産めるようになります。新女王は卵巣が大きくなるだけでなく、脳が約20%も縮小することが分かりました。

インドクワガタアリの女王が王位を降ろされると再び働きアリに戻り、脳と卵巣が元の大きさに戻ることが明らかになりました。これを脳の可塑性と呼んでいますが、このような可逆的な可塑性は非常に珍しいもののようです。

ジョージア州にあるケネソー州立大学の研究グループは長年インドクワガタアリを研究し、女王アリのように繁殖可能になった働きアリを「ガマゲイト」と呼び、「既婚の働き手」を意味するギリシャ語に由来する言葉です。

インドクワガタアリは、コロニーすべての個体が繁殖する能力を持ちますが、実際に繁殖できるのは戦いを勝ち抜いたガマゲイトだけとなっています。この戦いにはコロニーの半分の個体が参加することもあり、最長で40日間も続くようです。

戦いに勝ったガマゲイトの体内ではさまざまな変化が起こります。中でも重要なのは脳が5分の1ほどに縮小します。ガマゲイトは毒液を作らなくなり、侵入者が来ると身を隠し狩猟行動も一切しなくなります。

アリの脳に生じた変化が元に戻るかどうかを詳しく調べるために、60匹のガマゲイトを選び識別のために色を塗りました。ランダムに選んだ30匹のガマゲイトは数週間隔離し、残りの30匹は比較対象群として隔離せず元のコロニーに戻しました。

隔離されたガマゲイトの繁殖力は低下したようで、隔離後のそれぞれのコロニーに戻すと、すぐに他の働きアリたちに捕まってしまいました。これはコロニーの中で生殖能力のある個体が増え過ぎないようにしていると考えられます。

こうして拘束されたガマゲイトは、1日程度で働きアリに戻ります。働きアリに戻った個体の脳をスキャンしてみると、全ての特徴が完全に元の働きアリに戻っており、脳も元の大きさまで成長していました。

このような脳のサイズや複雑さが大きく変化する現象は、冬眠するリスや一部の鳥類などでも報告されていますが、昆虫では初めての発見のようです。

ここではなぜ脳に可塑性が出てくるのかは言及していませんが、常に一定に保たれている思われる脳の大きさが変化するというのは面白い自然現象と言えます。


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