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ガン細胞を光で壊す「光免疫療法」発見の瞬間

2023-10-14 10:33:29 | 健康・医療
2020年に厚生労働省から承認され、およそ9割のガンに効く治療法と期待されている「光免疫療法」です。

現在これがガン治療の大きな武器となりつつあるようですが、この治療法の開発の経緯についての記事がありましたので紹介します。

2009年米国国立衛生研究所(NIH)の研究者たちは、「ガン分子のイメージング」に取り組んでいました。イメージングというのは簡単にいえばガンを可視化する研究です。ガン細胞の表面には他の正常細胞にはないタンパク質が、多数分布しています。

ガン細胞を移植したマウスの体組織内に、このタンパク質とだけ特異的に結合する物質を送り込むと、ガン細胞にだけくっつくことになります。この物質に蛍光物質を付けてやれば、ガン細胞だけを光らせることになります。

外科手術の際は、その光っている部分のガン細胞だけを取り除くことができるようになり、取り残しも防げます。こうした物質をチームは研究していました。ここで「IR700」という光感受性物質を取り上げました。

ところがこの物質はマウスのガン細胞に結合しているのですが、きれいに光らず、そのまま暗くなってしまいました。2年の研究ですでに200近くの蛍光物質を試しており、近赤外線を当てたとたんその光エネルギーに反応して、モニター内でガン細胞が鮮やかな緑色に光ることを確認しています。

このIR700はフタロシアニンという化合物が基本であり、光や熱に強い性質を持つ色素です。IR700を投与したガン細胞を倍率を上げてよく観察すると、ガン細胞がどんどん壊れていくように見えました。

まるで風船が割れるように、あるいは焼いた餅が膨らむように、ガン細胞が次々と膨張して破裂していくことが観察されました。普通に考えれば、近赤外線を当てるだけでガン細胞が壊れることはなく、いわば安全な光として近赤外線が選ばれているのです。

この現象をチームで詳しく検討した結果、これはガン治療に使えるのではないかとの結論に達し、「光免疫療法」が発見されたことになります。その後このIR700が何故光を当てるとガン細胞を壊すかのメカニズムも解明し、新たなガン治療法が確立されました。

これは述べてきたように、ガン細胞を光らせるというイメージングの研究から偶然生まれたものですが、多くの優れた方法がほとんど偶然から出てくるというのは確かなようです。

いわば失敗と思われることでも、しっかり追及する研究者の姿勢が重要であることを示しているような気がします。


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