ごっとさんのブログ

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ヒトの身体を支配する腸内細菌「移植」で治療

2024-03-21 10:39:06 | 健康・医療
近年腸内細菌の研究が盛んになり、「腸内細菌叢」が重要な役割をすることが分かってきました。

それに伴い腸内細菌をビジネスへと活用しようとする動きも活発になっています。2020年に順天堂大学、東京工業大学、慶応義塾大学の研究者らが共同創業したMGTxもそのひとつです。

腸内細菌ベンチャーと言えば、腸内細菌の検査ビジネスや腸内細菌を整えるサプリメント販売などを手掛けているイメージが強いのですが、MGTxは「便移植」を通じた腸内細菌叢の移植や、「腸内細菌叢バンク構想」などを掲げる変わった戦略を取っています。

腸は地球上で最も高い濃度で微生物が存在する場所と言われています。腸の表面には細菌が40兆ほど共生していると言われています。人間の全身の細胞の数が37兆個であることを考えると、その膨大さが分かります。

ヒトは生まれる前、胎児のころはほぼ無菌状態です。出産時に産道で母親から菌を受け継ぎ、出産直後から腸内細菌との共生が始まります。この時受け付いた細菌の組成は一生固定されるわけではなく、健康状態や生活習慣、食事によっても簡単に変化します。

ヒトは食べたものを胃や腸で分解し、栄養を供しています。この時取り込んで良いもの(自己)/取り込むべきでないもの(非自己)が区別され、腸内細菌はこのプロセスに大きく関わっています。

これは腸内細菌のバランスが崩れることで、体調が悪化したり病気を引き起こしたりする可能性があることになります。MGTxでは、腸内細菌を整える手法として「腸内細菌叢移植(FMT)」を通じた疾患治療の実現を目指し、研究開発を続けています。

FMTとはドナーとなる健康な腸内細菌を持つ人の「便」を移植することで、患者へ健康な人の腸内細菌を「生態系ごと」移植する技術です。健康なドナーの便から腸内細菌を採取し、大腸内視鏡などで患者の腸に移植します。

この治療法はメタジェンでは、潰瘍性大腸炎を対象に治療法の開発を進めています。潰瘍性大腸炎の患者数は、1970年代には1000人にも満たなかったが、現在は20倍以上に増加しています。

便を移植するだけなら簡単なのではと思う人もいるかもしれませんが、腸内細菌を単に移植するだけで、患者の腸に定着するとは限りません。この定着のしやすさを左右する要因はまだ明らかになっていないようです。

FMTは、腸内細菌をその生態系ごと移植する手法ですので、一度高品質の腸内細菌を得られたとしても、その細菌叢を同じバランスで人工的に増殖・維持させることは現在の培養方法では困難としています。

まだ難しい問題もあるようですが、薬ではなく細菌を使って治療するというのは面白い試みと感じています。


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