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ストレスが脳に及ぼす深刻な影響「うつ病」の現実

2023-04-11 10:38:18 | 健康・医療
私はうつ病というと気分の問題的に考えていましたが、深刻な病気であることは確かなようです。

誰もが多かれ少なかれ、ストレスを感じながら生活しています。どれくらいストレスを受けるとうつ病になるのかの実験結果が発表されました。

大きくて攻撃的なマウスと普通のマウスを同じケージに入れて飼育しました。すると大きなマウスが普通のマウスを攻撃していじめるようになります。普通のマウスにとっては大きなストレスになり、これを1日10分、10日間続けると普通のマウスの行動に変化が現れました。

通常マウスは仲間を見つけると関心を示して近づいていくのですが、ストレスを受けたマウスの中に仲間に関心を示さない「うつ」様行動を示すものがいたのです。それだけでなく不安が高まり、適切な行動を柔軟に行えなくなるなどのうつ様行動も見られました。

この実験結果のポイントのひとつは、実験対象のマウスはすべて遺伝情報がほぼ同じ同一系統を用いたことです。ストレスに対する強さに関係する遺伝子タイプがあることが確認されています。

遺伝情報が全く同じで、同じ期間ストレスを与えても行動が変わらないストレス抵抗性群と行動が変わるストレス感受性群に分かれたのです。これは一方のグループでのみ働くといった「遺伝子の働き方」に違いがあると考えられます。

遺伝情報によらない遺伝子のはたらきのオン・オフを制御する仕組みをエピジェネティクスと呼んでいます。ストレスによってうつ病が発症する仕組みや、ストレスに強い抵抗性の仕組みにエピジェネティクスによる遺伝子の働きの変化があることの解明が進んでいます。

この実験のように慢性ストレスを与えてうつ様行動を示したマウスに、セロトニンのはたらきを強める既存の抗うつ剤を与えると、うつ様行動の改善が見られました。

この慢性ストレスを与えたマウスの脳では、海馬とともに内側前頭野の一部の体積が縮小していることが分かっています。ストレスを与えたマウスの内側前頭野の神経細胞を調べてみると、急性ストレスと慢性ストレスでは正反対の変化が起きていました。

急性ストレス(1日10分のいじめ1回)では樹状突起が増えたのに対し、慢性ストレス(10日間)を受けた感受性群では逆に退縮していました。これは急性ストレスによってドーパミンを放出する神経細胞が活性化され、一方慢性になると細胞の活動が抑制されるためと考えられます。

こういった脳の変化には炎症が関与しているとの報告があり、「うつ病」の発症とエピジェネティクスとの関わりも明らかになりつつあるようです。

既にうつ病には良い治療薬もありますが、こういったメカニズムの解明から新たな治療薬が見いだされるかもしれません。


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