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遺伝子発現を制御する核酸医薬

2020-05-02 10:20:51 | 健康・医療
色々な難病に対して、遺伝子に直接作用する医薬品の開発が進んでいますが、最近核酸医薬という筋ジストロフィーの治療薬が承認されました。

ヂュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する「ビルテプソ」(一般名ビルトランセル)という薬で、2020年3月に条件付きで承認されたばかりです。

筋ジストロフィーは筋肉の壊死・変性が次第に進行していき、筋肉が低下することでやがて呼吸ができなくなってしまう、生命を脅かす難病です。

いくつかの種類に分類されていて、そのひとつで最も代表的なものがヂュシェンヌ型で、根本療法はなくステロイド薬での治療が一般的でした。このDMDは男児の約4000〜5000人に1人の割合で発症し、10歳までに歩行困難となり、呼吸機能や心機能が低下して、30代で死亡することが多いという難病です。

DMDは原因となるDMD遺伝子の異常によって、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が作られなくなります。ジストロフィンは筋肉細胞の一構成要素で、なくなると筋肉細胞が壊れやすくなってしまいます。

この筋肉細胞の変性と破壊は徐々に進行していき、結果的に筋肉が働かなくなってしまいます。ビルテプソは「アンチセンス核酸」と呼ばれる、ある特定の配列を持った核酸(遺伝子の本体)に結合することができる物質です。

核酸医薬品は、オリゴヌクレオチドを基本骨格とし、タンパク質発現を介さず直接生体に作用するものです。そのうちアンチセンス核酸は、細胞内でRNAに結合して作用するもので、これまで世界で上市された核酸医薬品の10品目となります。

DMDはDMD遺伝子の一部が生まれつきないという異状によって、遺伝子の発現が途中でストップしてしまいます。そのためDMD遺伝子が発現できず、その産物であるジストロフィンが正常に作られなくなって発病します。

ビルテプソはDMD遺伝子に結合することで、遺伝子発現のストップを解除します。その結果ジストロフィンが作られるようになり、筋肉の変性と破壊を防ぐのです。

核酸を用いて遺伝子発現をコントロールするという点は、遺伝子治療薬ならではで非常に画期的と言えます。これまで有効な薬がなかったDMDの治療における一筋の光として、その効果が期待されています。

この様に遺伝子のメカニズムと、核酸合成技術の進歩によってこういった核酸医薬は、遺伝子治療薬として期待が持てそうな気がします。


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