ごっとさんのブログ

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幸せホルモン「オキシトシン」のはなし

2021-01-15 10:24:03 | 自然
ヒトの身体の中では非常に多くのホルモンが存在し、いろいろな生理作用をコントロールしています。

そのなかに情緒的な感情をコントロールしている幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」があります。オキシトシンは大量に分泌されると愛情や仲間意識を生じさせるなど、人間の相互作用を考えるうえで欠かせない物質です。

オキシトシンは脳の視床下部でつくられ分泌されます。その名の由来は「迅速な出産」という意味のギリシャ語からきており、文字通り出産を早めたり、射乳(乳房から乳汁がでること)を促したりする働きがあります。

こうした陣痛促進の働きのほかにも、オキシトシンの「良い効果」がたくさん調べられてきました。オキシトシンが分泌されると、認知能力が上がることがラットを用いた実験で明らかになりました。

エサを置いた迷路にオキシトシンの分泌が高まった出産後授乳中の雌ラットと、そうではない雌ラットを入れたところ、前者の方が迷路を解くスピードが上がりました。

人間も同じといえるかどうかは分かりませんが、オキシトシンを大量に分泌したことがある個体の方が、認知能力が上がることが報告されています。一方でオキシトシンが分泌されると、合理的な判断が苦手になるとする研究結果もあります。

何かを判断させたときに、「損得」のような合理的判断よりも、いわゆる「情」や仲間とのつながりといった社会性を重視した判断に偏ることが分かっています。ラットを用いた実験で、オキシトシンを注射した個体を群れの中に放すと、その後群れとして行動することが増えました。

つまり固体同士があまり争わなくなり、仲間意識を強めるような行動が観察されました。この時ラットに「匂い」を感じさせないように嗅覚の受容体を阻害するブロッカーを注射しておくと、群れに戻しても仲の良い行動は見られませんでした。

オキシトシンは仲間であることを嗅覚で認知する機構に関与している可能性があります。脳の頭頂側頭連合野の近くに「角回」と呼ばれる、言語や認知に関する多数の処理を行っている部分があります。

この角回によって自分の体と別の固体の境界も認知しています。角回は相手との境界(ボーダー)を常にモニターしているため、普段はその活動が落ちることはありません。ある特殊な条件が揃うと、その活動が落ちることが明らかになっています。

例えば瞑想しているときや虚血になったとき、子供ができたときや性行動をしているときです。このような感覚の時に、人の体内ではまさにオキシトシンが分泌され、強い影響を与えているようです。

その他「愛情」についても重要な役割を果たしているオキシトシンですが、大切なのは「適切な値」で出ることとされているのは、面白いといえるかもしれません。