ごっとさんのブログ

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ガンの「温熱療法」による治療

2021-01-13 10:19:36 | 健康・医療
ガンの「温熱療法」はかなり以前から研究されていますが、ガン治療としてはなかなか表に出てこないようです。

ガン細胞は42℃以上で一定時間以上温めると死滅するという性質を持っています。この性質を利用してガン組織を加熱して治療するというものですが、簡単そうに見えますがなかなか難しい問題があるようです。

私の勤務していた研究所もこの温熱療法機器(ハイパーサーミア)の開発研究をしていました。薬の会社でもこういった医療機器分野に広げたいという思惑があったようです。40年も前のことですので、今から思うと原始的な研究だったような気がします。

主な課題は加熱するのにどの程度の電磁波を与えればよいかなどをやっていたようですが、問題は患部(ガン組織)の温度を測る方法がなかったことでした。ガンの周りの正常組織も43℃以上になると火傷を起こしてしまいますので、如何にガン細胞だけを暖めるかが問題でした。

私も動物実験をするときは見学に行っていましたが、ラットなどの小動物では非常に良い結果が出ていましたが、私が見に行った小さなブタではあまり良い結果が出なかったようです。

どうもこのくらいの大きさになると、42℃に達しても血流によって温度を下げる働きが強く、一定時間42℃に保つのが難しいようでした。

私の感じでは42℃くらいは風呂の温度もそのくらいになりますので、簡単な気がしていましたが、実際の身体は外部温度にかかわらず臓器などは一定に保つ働きが強く、厳密な温度コントロールが必要でした。

その後この機器は実用化されたようですが、どうも事業としては失敗だったのかもしれません。現在では機械を用いてガンの部分を加温する場合、多くはマイクロ波かラジオ波(高周波)が使われています。

マイクロ波は体の深部までは届かないことから、表面にあるガンに適しています。ガンが深部にあるときは、ラジオ波が使われるようです。どちらを使う場合でもガンの部分の温度と、その温度をどのくらいの時間保てるか、周囲の正常細胞の温度は何度かを正確に確認する必要があります。

どうも現在の技術をもってしても、この課題はなかなか難しいようです。そのため温熱療法は単独での治療ではなく、抗ガン剤治療または放射線治療と併用することになっています。温熱療法は胆道系のガンには効果があるようで、一部の医療機関では実施されているようです。

少し異なりますが、経皮的ラジオ波焼灼療法と呼ばれるガン治療法があります。肝臓ガンや転移ガンに対し、超音波でガンのある場所を確認し、細い針を刺しラジオ波を流して焼却する方法です。

私はガンになったらこの温熱療法が良いと思っていましたが、ガンが熱に弱いという目の付け所はよいのですが、どうも難しい問題が解決できていないのかもしれません。