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ごっとさんのブログ

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大腸菌の代謝系を改変し発酵生産を増強

2020-02-15 10:24:11 | その他
神戸大学と理化学研究所の研究グループは、大腸菌の代謝系を改変して生物資源(バイオマス)を与え、ナイロンの原料の生産性を8倍に引き上げる技術を開発したと発表しました。

他の物質生産にも応用でき、食品・医薬品や化成品原料の生産性向上が見込めるようです。大腸菌にバイオマスを与えると、菌体の維持・増殖とともに目的とする生産物を作らせることができます。

バイオマスを多く与えても菌体ばかりが増殖することがあり、大腸菌の代謝系はひとつしかないため、菌体維持のためのエネルギーを削って生産性を向上するのは不可能とされてきました。

そのため目的とする生産物を増やすには、その物質を作る経路の後ろを阻害したり、その物質を作る酵素の発現量を増やすといった工夫がされています。

研究グループはまず、原料として食糧と競合しないリグノセルロース系のバイオマスに着目し、その構成要素であるグルコースとキシロースを効率的に利用する代謝系を設計しました。

次に大腸菌を改変して2つの代謝系を独立して保持させ、設計した代謝系を構築しました。この改変によりグルコースを原料として目的物を生産し、キシロースを原料として菌体を維持・増殖できるようにしました。

この結果ナイロンの原料であるムコン酸と呼ばれるジカルボン酸を最適な培養条件で、80時間後に1リットル当たり4.26グラム作ることに成功しました。なおこのムコン酸はナイロンだけではなく、ペットボトルなどの高分子原料となる基幹物資とされています。

同じ株を使った従来の方法では1リットル当たり0.53グラムでした。理論上の最大収量に対する実際の収量でも、グルコース1グラム当たり0.31グラムという世界最高値で、従来の最高値は同0.21グラムでした。

こうした数値だけでは分かりにくいのですが、この生産量はほぼグルコースが完全にムコン酸に変換される数値と近く、微生物生産としては理想的な変換率となっています。

今回の研究では、ムコン酸以外にも食品・医薬品の添加剤として知られる1,2-プロパンジオールや芳香族必須アミノ酸であるフェニルアラニン、重要なアミノ酸であるチロシンの生産性向上も確かめ、汎用性が高い技術になることが示されたとしています。

糖類の使い分けで大腸菌の代謝を制御できることを示した今回の成果は、さまざまな糖類が混在するバイオマスを目的別に有効利用することにも貢献が期待できます。

さらにバイオマス由来の製品は大気中のCO2を増加させないという特徴を持っており、こういった技術開発することで大気中のCO2を減らした低炭素社会の構築が期待できるとしています。