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ごっとさんのブログ

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新インフルエンザ治療薬は革新的なのか

2019-01-24 10:26:10 | 
やはり今シーズンも1月に入り、インフルエンザが本格的に流行し始めたようです。

12月が比較的少なく、今シーズンはワクチンの効果が出たとしていたようですが、1月2週からは本格的に流行しはじめ、多くの学校で学級閉鎖などが続いています。

このインフルエンザの新しい治療薬「ソフルーザ」に注目が集まっているようです。1回分を服用するだけで有効性が期待できるという特徴から、即効性もあり効き目も強い、などとインターネットやマスメディアでも取り上げられています。

最近比較的権威のある医学誌に、インフルエンザに対するソフルーザの有効性を検討した論文が掲載されました。

この研究では、12~64歳のインフルエンザ患者1432人を、ソフルーザ投与群(610人)、従来から用いられている抗インフルエンザ薬のタミフル投与群(513人)、プラセボ(薬効のない偽薬)投与群(309人)の3つの集団にランダムに振り分け、インフルエンザ症状緩和までの時間を比較しました。

解析の結果、インフルエンザ症状の緩和までの時間(中央値)はソフルーザ投与群で53.7時間、プラセボ群では80.2時間と、ソフルーザ投与群で1日ほど統計学的にも有意に短くなることが示されました。

しかしながらタミフル投与群との差は認められず、従来の薬と比較して優れていることは証明されませんでした。

こういった研究にはいろいろと難しさが存在します。これだけの人数を集めると、インフルエンザの症状が出る時期や出方にも様々で、正確な発症時期を合わせることは難しくなります。

通常ウイルス感染から免疫機構が働き、抗体ができてウイルスをやっつけるまでには2、3日程度かかる、と言われています。これも個人差は大きいようですが、これだけで通常は治るわけですが、これがプラセボ投与群とすれば大体80時間というのは予想される時間と言えます。

これを薬の投与によって54時間に短縮することにどれだけの意味があるのか疑問です。タミフルと差がなかったというのは当然で、何らかの形でウイルス数を減少させれば、それだけ早く症状が緩和されるにすぎません。

このソフルーザは1日1回で済むなどの使用上のメリットがありますが、その有効性に関しては従来薬とほぼ同等であり、プラセボと比較して、症状の回復を1日程度早めるというものです。

またインフルエンザの重症化を予防するような効果も現時点では証明されていません。本質的にウイルス疾患というものは、薬ではなく免疫によって治すものですので、正常な免疫システムを持っている人(ほかの重篤な疾患の人以外)は、単に3日程度寝ているのが最も良い治療法と考えています。

新薬が出ると過大評価されがちですので、注意が必要かもしれません。