ごっとさんのブログ

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ガン免疫療法の危うさ

2018-10-16 10:12:27 | 
本庶先生がノーベル賞を受賞されてから、ガンの免疫療法が注目を集めているようです。

免疫細胞のブレーキに当たる部分をブロックして、ガン細胞を攻撃するようになるという点では、免疫療法という言葉は別に間違っているわけではありません。

しかしこの受賞以前から免疫療法を謳った治療施設が非常に多く存在していました。こういった治療の多くは患者のT細胞を取り出し細胞培養によって増殖させ、それを患者に戻すという治療法です。

これは単にT細胞をある程度活性化できるかもしれませんが、ガン細胞を攻撃するようになるかは全く科学的検証がされていないものです。こういったやや怪しげな免疫療法と差別化はできていないような気がします。

また今回注目されている免疫チェックポイント阻害剤という薬剤にも問題があると思っています。この代表的な薬がオプジーボですが、これは抗体医薬ですので、高価になってしまうのはやむを得ないところです。

この高額治療というところは別にしても、本当に「夢の薬」といえるのか疑問に思っています。一つはそのメカニズムからくるものです。

免疫細胞は、細菌やウイルスなどの病原菌を始め体外から入り込んできた異物を攻撃して排除する働きをしています。ここで問題はどうやって異物を認識するかですが、これは非常に複雑な免疫システムによって間違って自分の細胞を攻撃したりしないような機構が供えられています。

それでも異常に免疫細胞が活性化されて、自分の細胞を間違って攻撃したりすることが生じるのが自己免疫疾患と呼ばれる様々な病気となるわけです。

本庶先生が発見されたPD-1もこういった自己と異物を認識するための一つの機構と考えられます。免疫細胞が活性化してしまい、自分の細胞を攻撃しそうになったとき、PD-1受容体が働いて攻撃しないようにするという、防衛システムの一つとして存在しているわけです。

このPD-1受容体はガン細胞も持っていますので、免疫細胞がガン細胞を攻撃できないというわけです。そこでオプジーボはこのPD-1に蓋をしてしまい、ガン細胞のPD-1受容体によってブレーキが掛けられないようにするための薬です。

しかし問題はこのブレーキを外すことが、全ての正常細胞でも同じように生じてしまう点です。意地悪な言い方をすれば、オプジーボはガン特異的に働くものではなく、すべての正常細胞に対しても攻撃可能にしてしまう薬ということができるわけです。

このあたりがオプジーボの有効率が20%程度である、つまり10人に使っても2人しか効果が出ない理由のような気がしています。また副作用として自己免疫疾患が出る可能性が高いため、その投与は副作用を見極めながらの非常に難しいものとなります。

この薬は他の方法が全くない患者にも有効例が出ますので、素晴らしい薬であることは確かですが、以上述べてきたように危ういところがあるのも事実だと考えています。