HAYASHI-NO-KO

北岳と甲斐駒ヶ岳

伊吹山北尾根の花2

2010-05-10 | 番外編 不明植物など

伊吹山北尾根の国見峠からは正面に伊吹山が望める。
かつて、一日何十キロを歩くことや、二週間も山に入ることを楽しんでいたワンダラーにとっては、
目的地が見通せると言うのは、正直気乗りのしない山行の一つだった。
長い稜線歩きの果てにやっと最後のピークに立つ…、或いは深い谷間や藪を分け進んだ最後に、
やっと稜線に出て目指すピークを仰ぎ見る…、贅沢な選択をしていたものだった。
しかし、齢還暦を過ぎた人が、過去の栄光に縋ったり自慢することは見苦しい限りだ。

今日は、しっかりと花博士の役割を全うしないといけない使命を持った山歩き、
最初のピーク、国見岳への上りで早くも幾つもの花たちが迎えてくれたから、
歩くこと、花写真を撮ることよりも、咲いている足下の花を説明することに専念した。
何よりも、特異な地形から残されている、伊吹山固有の希少種が、
ここに昔から当たり前に咲いているのですけどね…、
という風情で当たり前に咲いているのが嬉しい。
そこに行けば、当たり前に咲いている花に会うために…、なんて気障な台詞が口に出る。

国見岳手前の広い山頂からの北東方に、残雪の白山がぼんやりだけど見える。
右手の山塊は、能郷白山だろうか。


昼食を摂った国見岳山頂。かなり広い広場になっている。
聞けば、ここはKDDIの無線中継基地だった場所、地図上の国見岳山頂は少し南のコブである。


シハイスミレ 
ここでは変種のマキノスミレも可能性がありそうだけれど、花色や葉の広がりから、シハイスミレとする。
葉の表面に明瞭な白斑が入っていることから、フイリシハイスミレとしても良さそうだ。


タチツボスミレ
このタチツボスミレと酷似するイブキスミレ(Viola mirabilis var. subglabra)を探したが、仔細に観察する時間は無かった。

エゾノタチツボスミレ Viola acuminata 
ツボスミレ、とも思ったけれどかなり大型、この一ヶ所だけしか見なかった。

足の踏み場もなく広がっていた。苞葉の切れ込みで確認。

ヤマエンゴサク 

珍しく、薄桃色のミヤマカタバミも咲いている。

ミヤマカタバミ

イブキキンポウゲ 
ウマノアシガタの変種、茎は無毛。

カタクリ
稜線上では花は終わりに近いものが多かったけれど、北・西斜面ではまたまだ咲いていた。
零れた種子が斜面を流れ落ちたのだろう。

山麓から国見峠までの道路脇には、フウロケマン(或いはミヤマキケマン)が列をなしていた。
残念ながら、北尾根では全く見かけなかった。
ノダフジやレンゲツツジも新緑に彩りを添えていたが稜線には無い。

(2010.05.08 伊吹山北尾根)

 
【レンゲツツジ 蓮華躑躅の蘊蓄】
中国の古典にある言葉「花苗、鹿葱に似て、羊其の葉を誤食すれば、躑躅(てきちょく)して死す。故に以て名と為す」
躑躅(てきちょく)は「たちもとおる、ゆきもどりつする」という意味で羊が葉を食べると、足が麻痺、萎えて竦む。
中国では「躑躅花」は羊躑躅(トウレンゲツツジ)の花を指し、日本ではこの変種で形態が酷似して有毒のレンゲツツジを指す。
現在の日本では「躑躅」の字を充ててツツジ科ツツジ属を表しているけれど、
中国ではトウレンゲツツジとその近縁種(有毒のツツシ)だけを指す。
レンゲツツジの別称にイワツツジがある。
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伊吹山北雄根の花 -1 -2 -3



4 コメント

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伊吹山の花 (granma )
2010-05-12 20:19:29
こんばんは。
昨日コメントを書いたのですが数字を入れて
クリックしたつもりなのに送られていなかったようでした。やり方が悪かったのですね。
伊吹山、色々な花が咲いているのですね。
初めて見せて頂く花もありました。
ハシリゴコロ、先日奥多摩で見ていて
名前が分からなかった花でした。
伊吹山、お友達が花が沢山見られるから
行ってみたらと勧めてくれているところで、
いつか行きたいと思っています。
少し不便? (林の子)
2010-05-13 00:34:35
そうですね、東の高尾、西の伊吹。
こちらは、山頂直下まで車が入れるので、バスツアーで賑わう山です。
ただ雲がかかりやすい地形なので、霧の中を歩かされることも多いようです。
それでも、二時間程度歩けばかなりの花が堪能出来そうです。
東京辺りからだと、日帰りは少しきついですが、夏場はお勧めですね。
色々なお花。 (こいも)
2021-04-30 16:54:13
林の子さん
高山のお花をたくさん見させていただきました。
そこに咲いているのが一番相応しいのでしょうね。
名前のわかるものもわからないものも、とっても素敵なお花ばかり、、、
できることなら行って見てみたいです。
高い所は苦手ですからきっとダメですね。
【レンゲツツジ 蓮華躑躅の蘊蓄】
読ませていただきました。
躑躅の知らないこと…また知ることができました。
ありがとうございます。
山の花 (林の子)
2021-04-30 17:58:40
確かに何十年も昔は、ただ歩くだけの体育会系のクラブでしたから
一日どれだけ歩いたかを競っていましたから足元に咲いている花も
愛でる余裕など無く、景色も見る余裕も無く…でした。
だから今でも同じで、歩くことしか能が無い気もしますが
時には足元の花にもカメラを向けることが出来るようになりました。
残念でしたね…と言われることも多いのですが
人の興味の対象は時と共に変わって行くものでしょうから
昔は昔、今は今で良いように思いますね。
山の花はですから詳しく画像に残すことも無いのですがやはりそこに足を運ばないと見られないもの、そう思っています。

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