携帯電話業界ブログ

── ケータイ業界関連の記事集.

日本の先端ケータイ、海外へ再発信 端末各社再編、巻き返しへ

2010-08-17 | 市場動向/日本



 「iモード」、「写メール」など様々な機能で世界最先端を走り続けながら、海外では不人気なケータイ。堅固なインフラを持ちながら、サービスやコンテンツは貧困とされるブロードバンド。

 日本の通信業界は、独自の進化を遂げたあまり世界で孤立する「ガラパゴス化」が深刻だ。巻き返せるのか。世界市場に向けた再挑戦が始まった。


●組織融合急ぐ

 川崎市にあるNECカシオモバイルコミュニケーションズ本社。28階から37階までのオフィス内には、引っ越しの段ボールが所狭しと並ぶ。

 6月に始まった社員の「大移動」は今なお続く。NECは6月1日、携帯電話機事業をカシオ計算機と日立製作所の同事業会社と統合した。

 半導体の事業再編で空いたNECのオフィスに、旧カシオ日立の携帯電話事業会社の社員約500人が東京都東大和市の研究所から移動している。

 「役割グレード適用者」と「月俸」。同じ管理職でもNECと旧カシオ日立で呼び方が全く異なる。「NECの方が会議や取り決めが多い」といった文化の違いも多い。

 「12年度に1200万台の販売を目指す」。山崎耕司社長は高い目標を掲げ、「統合100日プロジェクト」で融合を急ぐ。

 事業統合で狙うのは海外市場の開拓だ。「2年以内に海外で売れる端末を出そう」。12年度に世界販売台数を1.6倍に拡大する計画に向け、山崎社長はそう号令をかける。

 旧カシオが米通信大手ベライゾン向けで築いた携帯電話の販路を生かして、米国のほか、メキシコやオーストラリアなどにも拡販を狙う。

 10月に東芝と携帯電話事業を統合する富士通も、海外市場を見据える。

 これまで海外で本格的な実績がない富士通の大谷信雄執行役員常務は、「海外でもモバイルインターネットへの関心が高まってきた」と期待を膨らましつつ、「海外の通信会社とどう組むかが重要」とみる。

 まずは、東芝が欧州で展開するスマートフォンの販路を生かす考え。


●飽和状態の国内市場

 国内市場トップのシャープは、片山幹雄社長の強い意向もあり、08年に中国携帯市場に参入。

 大型家電量販店を含む販売店も2010年末までに5割増の1万店に増やす計画だが、中国で存在感を示すまでには至っていない。

 米国では、5月にマイクロソフトと提携し、SNSに特化したスマートフォン「KIN(キン)」をベライゾン向けに投入。

 欧州でもボーダフォンと組んで販売予定だったが、取りやめになった。「米での状況を見てボーダフォンがさじを投げた」との見方もある。

 それでも各社が海外を自指すのはなぜか。国内市場が飽和状態にあるのが背景。

 加入件数が約1億1000万となった現在、端末は買い替え需要が大半。国内出荷台数は、年間約3100万台とピークの6割の水準まで激減し、回復も見込みにくい。

 ガラパゴス化した国内向けだけでの成長は極めて難しい。

 「コスト競争力、ブランド、販路の3つがポイントになる」。野村総合研究所があげる海外で成功する必要条件からは、日本勢が抱えた課題が浮き彫りになる。


●世界シェア3%

 再編によって、国内はシャープ、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、富士通・東芝、NECカシオと、京セラの5社にほぼ集約されるが、世界シェアは合計約3%。

 最大手シャープでも年間1000万台規模で、約4億3000万台のフィンランドのノキアや2億台を超す韓国サムスン電子などとコストやブランド面で肩を並べるのは容易ではない。




【記事引用】 「日経産業新聞/2010年8月17日(火)/1面」


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