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携帯電話大手ノキア、凋落止まらず 自縄自縛で失速、スマートフォンで出遅れシェア急落 

2012-05-16 |  ノキア



 フィンランドの携帯電話大手ノキアの凋落が止まらない。

 今年1-3月には、14年守った携帯販売世界首位の座を韓国サムスン電子に明け渡した。震源地は世界最大市場の中国だ。かつてノキアが4割のシェアを握った「金城湯池」は今や、サムスンや中国勢が席巻する。

 スマートフォンへの対応で後手に回ったノキアは、復活できるのか。


●負のスパイラル

 「ノキアは全く売れないよ」。中国のシリコンバレーと呼ばれる北京市の中関村。携帯電話機の販売店が100軒以上並ぶビルで、男性店長はぼやく。

 サムスンなど各社は営業員を送り込み顧客に声を掛けるが、ノキアには営業員もいない。

 実は、ノキアにとって中国は最も強い市場だった。中国の調査会社・易観国際によると、ノキアの中国での携帯電話機販売台数シェアは統計開始の2006年から1位となり、ピークの08年7-9月期には38.9%に達した。

 しかし、11年4-6月期に30%台を割り込むと、同年10-12月期にはピークの半分以下の16.1%まで一気に落ちた。12年1-3月期も中国での販売台数は前年同期比62%減った。

 北京市の開発や生産拠点で従業員100人以上を削減。中国事業の担当としてノキアの躍進を支え、「中国先生(ミスター中国)」と呼ばれてきたコリン・ジャイルズ氏も6月の退任に追い込まれた。

 ノキア詣でに励んでいた電子部品メーカーの足も遠のく。携帯電話機向け電池大手の比亜迪(BYD、広東省)はノキア向けで成長したが、最近は経営幹部が米アップルなどに足しげく通う。

 「ノキアには電子部品メーカーから最新情報も集まらなくなり、負のスパイラルに陥っている」(日系部品会社幹部)。


●自縄自縛で失速

 中国でノキアが失速したのはなぜか。大きな原因は、スマートフォンで自前の基本ソフト(OS)「シンビアン」にこだわったためだ。

 米グーグルが開発したOS「アンドロイド」はオープンソースで、ソフト開発会社が競ってゲームなどを開発したため、ソフトが早く充実して利用者の支持を得た。

 サムスンは、アンドロイドを採用するスマートフォンの販売を強化。中国のスマートフォン販売台数では11年10-12月期で22.0%のシェアを占め、ノキアを大きく上回った。

 スマートフォンの成長を原動力にして携帯電話機全体のシェアも19.7%となり、念願の中国市場1位を獲得した。

 アップルも好調だ。多機能携帯端末「iPad」で中国と訴訟問題などを抱えるが、「iPhoneの流行には関係ない」(北京市内のアップル販売店)。

 09年の正式発売から急成長し、1-3月の販売台数は前年同期の5倍に急増。スマートフォン市場で5.7%、全体で2.2%のシェアを占める。香港経由の並行輸入品を含めると、実際のシェアは3-5倍以上ともいわれる。


●成長する中国メーカー

 ノキアのライバルは、サムスンとアップルだけではない。実は最も成長しているのは中国メーカーだ。

 通信機器メーカーの華為技術(ファーウェイ、広東省)、中興通訊(ZTE、同)が10年ごろに参入し、11年10-12月のシェアはそれぞれ3位の8.1%、4位の7.0%まで伸ばした。

 両社とも第3世代携帯電話サービス(3G)をきっかけに携帯電話機に本格参入。中国国有通信大手との提携などを活用して1万円強の低価格スマホを相次ぎ投入している。

 中心価格帯で見ても中国製は1万-2万円と、海外メトカーの半値以下。サムスンの中国法人幹部は「本当に強敵なのは、華為と中興の2社だ」と漏らす。

 世界知的所有権機関(WIPO)がまとめた11年の特許の国際出願件数はZTEが51%増の2826件で、パナソニックを抜いて首位となった。華為も20%増の1831件で3位。

 技術力の向上もあり、華為は12年に前年比8割増の1億台の携帯電話機販売を計画。ZTEも12年のスマートフォン販売は前年の2倍の3000万台以上を狙うなど強気の姿勢を見せる。


●メーカー間の競争激化

 中国の携帯電話加入件数は、すでに10億人を突破した。易観国際によると、携帯電話機の普及が一巡したため12年の携帯電話機販売台数は初めて前年比マイナス成長に転じる見通し。

 ノキアも米マイクロソフトと提携して使い勝手を高めたスマートフォンの投入を急ぐが、メーカー間の競争が激しくなるのは確実。激しい販売競争に日本勢も無縁でいられない。

 ソニー・エリクソンの中国シェアも、11年10-12月期は09年の半分の1.4%まで下落した。ソニーはエリクソンとの合弁を単独出資に切り替え、ソニーブランドで巻き返しを図る。

 それ以外ではNECが今年6年ぶりに中国市場に参入。中国メディアによると、京セラが中国電信に供給し、携帯電話を販売する。ただ、いずれも特殊機能を持つニッチ商品がメーンで、中国で真っ向勝負を挑む形は取っていない。

 中国市場での成功の条件について、通信業界に詳しい中国のアナリストは「通信分野は技術革新のスピードが速く、経営幹部の迅速な判断が求められる上、中国政府の規制も絡むため当局側や携帯電話会社側と深い関係が構築できる人材が必要だ」と指摘する。

 中国市場の苦境にあえぐノキアの現状は、他のメーカーにとっても人ごとではない。




【記事引用】 「日本経済新聞/2012年5月16日(水)/20面」


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