国内携帯電話市場の勢力図に変化が起きている。
MM総研が9日にまとめた2011年度の携帯電話メーカーの国内出荷台数によると、10年度まで6年連続で首位だったシャープが3位に後退。富士通と米アップルが1、2位に躍り出た。
いずれもスマートフォンの販売増が要因で、スマートフォンのブランド力に勝るメーカーがシェア上位に躍り出る結果となった。
●スマートフォンに舵
富士通の出荷台数は766万台と10年度比で17.5%増加。総出荷台数に占めるシェアは17.9%と0.6ポイント上昇した。
携帯電話部門を統括する大谷信雄執行役員常務が「11年度は、発の舵をフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンに切った」と話すように、10年度に2種類だったスマートフォンの品ぞろえを5倍の10種類に拡大。
タブレット端末も投入した。中でも、NTTドコモ向けで「おサイフケータイ」や「ワンセグ」など日本人が好む機能を備えた「ARROWS XLTE」が好調だった。
2位のアップルは、KDDI(au)が昨年10月からiPhoneの取り扱いを始めたことで出荷台数が2.2倍の725万台に増加。シェアも8.4ポイント上昇の17%と急増した。
一方、シャープは16.2%減の719万台、シェアも6ポイント低下し、16.8%だった。
同社はドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルと3通信会社(キャリア)に携帯電話を供給しているが、各キャリアがiPhoneや韓国サムスン電子製の「ギャラクシー」シリーズなど、海外の人気製品を投入したことで販売が落ち込んだ。
MM総研によると、スマートフォンの出荷は今後も増加し、今年度は15.4%増の2790万台に増える見通し。総出荷台数に占める割合も11年度の56.6%から68.7%に増えるという。
●競争激化必至
スマートフォンの開発に出遅れた国内メーカーはいずれも巻き返しに必死で、「もはや、スマートフォンの技術力は海外勢に見劣りしない。今年度こそ本当の勝負の年」(国内メーカー幹部)との声もある。
一方、米アップルはiPhoneの次世代機を今秋に発売する見通し。サムスン電子も今夏からギャラクシーシリーズの新型を投入する。スマートフォンを巡る国内外メーカーの競争激化は必至だ。
<2011年度国内携帯電話出荷台数シェア>
1位 富士通:17.9%
2位 米アップル:17.0%
3位 シャープ:16.8%
4位 パナソニックモバイル:9.5%
5位 ソニーモバイル:8.9%
6位 京セラ:8.6%
7位 NECカシオ:7.0%
8位 その他:14.2%
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年5月10日(木)/12面」
「日刊工業新聞/2012年5月10日(木)/9面」