戦争の「原因」を情報やコミットメント問題に求める「戦争のバーゲニング理論」は、国際政治学・安全保障研究の重要な研究テーマとして定着しています。そして、この理論の構築に大きく貢献したのが、ジェームズ・フィアロン氏(スタンフォード大学)です。彼が17年前に発表した画期的論文「戦争に対する合理主義者の説明」("Rationalist Explanations for War," International Organization, Vol. 49, No. 3, Summer 1995, pp. 379-414)は、その後の戦争研究とりわけ危機のバーゲニング研究に多大な影響を与えました。
学術論文の価値を示す指標の1つは、論文の被引用回数です。その数が多ければ、それだけ学問にインパクトを与えたことになります。フィアロン氏の同論文の被引用回数は、グーグル・スカラーで簡易検索すると、1690回と表示されました。それだけ多くの研究者に注目されてきたということです。
同論文において、フィアロン氏は、「私的情報(private information)」と「コミットメント(commitment)」が戦争のカギを握っていると主張しています。どういうことでしょうか。彼は、戦争の発生には根本的なパズルがあり、それが未だに解かれていないことから議論を始めます。すなわち、「戦争の中心的パズル、そして戦争を研究する主な理由は、戦争がコストを伴うものであるにもかかわらず、戦争が起こってしまう」ということです(p. 379)。戦争は国家に間違いなく大きな代償を払わせることになるのだから、国家が「合理的」であるならば、戦争をせず、交渉して紛争の平和的解決をはかるはずである(その方が得だから)。しかしながら、そうならないのは、平和的解決を妨げる要因が作用しているからであり、それらの主なものは、「私的情報」と「コミットメント」だということです。
私的情報(軍事機密など、一方の国家のみ保有する情報)は、戦前のバーゲニングの成立を阻害します。なぜならば、交渉において、国家は自らの立場を有利にしようとして、自国の力を実力以上に相手に示そうとするなど、私的情報の操作を意図的に行おうとするからです。その結果、双方の国家は軍事力や戦争への意志を正確かつ確実に知ることができなくなり、交渉による合意に至らないということです。「コミットメントの問題」も、戦争に至る前の交渉を難しくします。なぜならば、国家は合意を反故にするインセンティブをもっており、将来も合意が守られることに確信を持てないからです。こうして、戦争よりも望ましい取引が存在するにもかかわらず、戦争は起こってしまうというわけです。
フィアロン氏の戦争の合理的説明は、エレガントな理論であり、論理的に一貫しています。また、かれは既存の戦争原因論を精緻化したことでも学問的に貢献しています。かつてジェフリー・ブレイニー氏は、この分野での現代の古典ともいえる名著『戦争の原因』(The Causes of War, 3rd. ed., Free Press, 1988)において、「戦争はふつう交戦する国がそれぞれの相対的な強さについて合意できない時に始まる」と喝破しました(同書、122ページ)。そうであれば、逆説的ですが、国家は相手国とのバランス・オブ・パワーを完全に知ることができれば、戦争をせずに、その相対的なパワー配分に応じた取引を平和的に成立させられるはずだ、ということです。ブルース・ブエノ・デ・メスキータ氏(ニューヨーク大学)が主張するように、「既知のバランス・オブ・パワーは戦争の合理主義者の説明になりえない」(『戦争研究ハンドブックⅢ』14ページ)のです("War and Rationality," in Manus I. Midlarsky, ed., Handbook of War Studies Ⅲ: The Intrastate Dimension, The University of Michigan Press, 2009, p. 14)。このように、かれの研究成果は、多くの研究者に注目され、戦争理論の発展に貢献しました。もっとも、全ての理論がそうであるように、フィアロンの理論にも問題があります。ここでは、これまで指摘された研究課題をいくつか紹介したいと思います
第1は、理論のオリジナリティです。スティーヴン・ウォルト氏(ハーバード大学)は、「私的情報」や「コミットメント問題」は、既存の研究にある類似コンセプトの「焼き直し」にすぎないと、以下のように批判しています。
「『私的情報』の概念は『秘密(機密)』というなじみの観念より広義であるが、危機時のバーゲニングに及ぼす影響という点では、実質的に同じである。…フィアロンが『コミットメント問題』と呼ぶものは、国際システムのアナーキー(無政府状態)の中心的な特徴として、これまで理解されてきたものである。…(したがって、フィアロン氏が数量化した理論は)新しい理論的主張を生み出していない」(Stephen M. Walt, "Rogor or Rogor Mortis? Rational Choice and Security Studies," International Security, Vol. 23, No. 4, Spring 1999, reprinted in M. E. Brown, et al., eds., Rational Choice and Security Studies, Cambridge: MIT Press, 2000, p. 24).

第2に、現実の国際政治との関連性について、疑問が呈されています。政治学や経済学の数理理論(formal theory)は、何か現実離れしているような印象を人々によく与えます。フィアロン氏の戦争のバーゲニング理論も、このパターンから逃れていないようです。フィアロン氏は、戦前のバーゲニングを成立されるには、私的情報をより確実に相手に伝えなければならないと主張します。そして、彼は、この考えを「コストのかかるシグナル(costly signals)」として定式化して、多くの関連研究を導いてきました。しかし、危機に直面した国家が、戦争の意志にかかわる国家機密や兵力に関する軍事機密などの私的情報を敵対国に進んで提供するなど、そもそも現実的にどれほどあり得ることなのでしょうか?この点について、ジョナサン・カーシュナー氏(ボストン大学)は、「より多くの情報が入手可能な現実世界の状況を想像することは難しい」と指摘しています。さらに、カーシュナー氏は、たとえ私的情報が明らかになったとしても、「専門家が同じ情報から違う結論を引き出すことは、よくあることである」と主張して、私的情報の供給が交渉を妥結させやすくすることに疑問を投げかけています(Jonathan Kirshner, "Rationalist Explanations for War?" Security Studies, Vol. 10, No. 1, Autumn 2000, pp. 143-150)。
私のフィアロン論文の評価は以下の通りです。フィアロン氏の戦争のバーゲニング理論は、戦争発生のメカニズムに深い知見を与えていることは確かでしょう。その反面、同論文を戦争原因の研究と位置づけることに、私はやや違和感を覚えます。といのも、フィアロン氏の自身も認めている通り、私的情報の欠如やコミットメント問題は、アナーキー下の国際政治においては常にコンスタントに存在しているので、「なぜ国家は戦争より望ましい取引を決めるのに失敗したりするのか、説明できない」(p. 410)からです。つまり、(バーゲニングに失敗して)戦争が起こるかどうかは、別の変数に強く左右されるということです。そうであれば、この論文は、戦争原因を正面から理論化した研究というよりも、紛争や危機の平和的解決の失敗を合理的選択理論により説明した研究であり、同論文のタイトルも、「バーゲニング失敗に対する合理主義者の説明」のほうが、しっくりきます。
さらに、戦争のバーゲニング理論は、正直、あまりにも非現実的なロジックに依拠していると思います。これはカーシュナー氏の批判と関連しますが、戦前の合意形成の失敗や戦争の帰結は、はたして私的情報の欠如に還元できるのか、ということです。直感的に推論すれば、フィアロン氏の説明は説得力があります。たとえば、彼の説明は太平洋戦争の事例には、よく当てはまりそうです。すなわち、日米両国は、国力や戦争への決意に関する「私的情報」を(コストのかかるシグナルなどにより)相互に伝達すれば、相対的パワーや意志を反映した合意(日本の東南アジア・中国からの撤退)を戦争せずに形成できたはずだから、その方が、日米両国にとって、莫大な犠牲を払った戦争よりも、はるかに合理的である(ましである)となります。
では、フィアロン氏の理論を日露戦争に適用した場合は、どうでしょうか?日露の国力の差からして、戦前に戦争の帰結を推論すれば、上記の太平洋戦争の「反実仮想」と同じような結論に達するはずです。日本はバランス・オブ・パワーで、ロシアに大きく後れをとっていました。相対的な工業力では、ロシアが47.5に対して日本はわずか13です。陸海軍の兵力数では、ロシアが116万2000人に対して、日本は23万4000人です。軍事史の大家であるポール・ケネディ氏(イェール大学)によれば、この頃の日本の国力は「(工業力において)列強の最下位かそれに近かった」のです(『大国の興亡(上巻)』鈴木主税訳、草思社、1993年、312ページ、なお、上記の工業力・兵力のデータは1900年時点のもので、同書305、307ページより引用)。したがって、日本はロシアとの戦争に負けることになるはずだから、コストのかかる戦争などしないで、日露の相対的パワーを反映した日露合意、すなわちロシアの満州における権益や朝鮮での優越(韓国〔朝鮮半島〕の領土を軍略で使用しないこと)を認める取引を成立させるのが、両国にとって「合理的選択」ということになります。しかし、実際には、日本は国力で圧倒的劣勢だったにもかかわらず、ロシアに辛勝して、朝鮮半島の指導と保護の権利、満州の権益(ロシア軍の撤退と遼東半島の租借地ならびに東清鉄道の支線の譲渡)を確保しました(横手慎二『日露戦争史—20世紀最初の大国間戦争―』中央公論新社、2005年、100、190ページ)。つまり、日露戦争の事例では、理論の予測と現実に、大きなギャップが認められるということです。「私的情報」が完全に提供されれば、この日露戦争の実際の結果さえも、前もって分かるものでしょうか?
戦争のバーゲニング理論は、戦争研究を行うにあたり、精密な仮説を組み立てることや論理の一貫性を保つことが、いかに大切であるかを教えてくれます。同時に、安全保障研究は深刻な政策問題の解決に関連づけるべきだという学問規範を受け入れるのであれば、非現実的な仮定に立った理論は、政策上の有効かつ実行可能な処方箋を導きにくくすることでしょう。一般的にいえば、戦争の数理理論は後者に問題を持つ傾向にあり、標準的なリアリズムの戦争原因論などは、前者に弱みがあると言えるかもしれません。両方の戦争研究アプローチが相互に学ぶ余地は、まだまだ広そうです。
学術論文の価値を示す指標の1つは、論文の被引用回数です。その数が多ければ、それだけ学問にインパクトを与えたことになります。フィアロン氏の同論文の被引用回数は、グーグル・スカラーで簡易検索すると、1690回と表示されました。それだけ多くの研究者に注目されてきたということです。
同論文において、フィアロン氏は、「私的情報(private information)」と「コミットメント(commitment)」が戦争のカギを握っていると主張しています。どういうことでしょうか。彼は、戦争の発生には根本的なパズルがあり、それが未だに解かれていないことから議論を始めます。すなわち、「戦争の中心的パズル、そして戦争を研究する主な理由は、戦争がコストを伴うものであるにもかかわらず、戦争が起こってしまう」ということです(p. 379)。戦争は国家に間違いなく大きな代償を払わせることになるのだから、国家が「合理的」であるならば、戦争をせず、交渉して紛争の平和的解決をはかるはずである(その方が得だから)。しかしながら、そうならないのは、平和的解決を妨げる要因が作用しているからであり、それらの主なものは、「私的情報」と「コミットメント」だということです。
私的情報(軍事機密など、一方の国家のみ保有する情報)は、戦前のバーゲニングの成立を阻害します。なぜならば、交渉において、国家は自らの立場を有利にしようとして、自国の力を実力以上に相手に示そうとするなど、私的情報の操作を意図的に行おうとするからです。その結果、双方の国家は軍事力や戦争への意志を正確かつ確実に知ることができなくなり、交渉による合意に至らないということです。「コミットメントの問題」も、戦争に至る前の交渉を難しくします。なぜならば、国家は合意を反故にするインセンティブをもっており、将来も合意が守られることに確信を持てないからです。こうして、戦争よりも望ましい取引が存在するにもかかわらず、戦争は起こってしまうというわけです。
フィアロン氏の戦争の合理的説明は、エレガントな理論であり、論理的に一貫しています。また、かれは既存の戦争原因論を精緻化したことでも学問的に貢献しています。かつてジェフリー・ブレイニー氏は、この分野での現代の古典ともいえる名著『戦争の原因』(The Causes of War, 3rd. ed., Free Press, 1988)において、「戦争はふつう交戦する国がそれぞれの相対的な強さについて合意できない時に始まる」と喝破しました(同書、122ページ)。そうであれば、逆説的ですが、国家は相手国とのバランス・オブ・パワーを完全に知ることができれば、戦争をせずに、その相対的なパワー配分に応じた取引を平和的に成立させられるはずだ、ということです。ブルース・ブエノ・デ・メスキータ氏(ニューヨーク大学)が主張するように、「既知のバランス・オブ・パワーは戦争の合理主義者の説明になりえない」(『戦争研究ハンドブックⅢ』14ページ)のです("War and Rationality," in Manus I. Midlarsky, ed., Handbook of War Studies Ⅲ: The Intrastate Dimension, The University of Michigan Press, 2009, p. 14)。このように、かれの研究成果は、多くの研究者に注目され、戦争理論の発展に貢献しました。もっとも、全ての理論がそうであるように、フィアロンの理論にも問題があります。ここでは、これまで指摘された研究課題をいくつか紹介したいと思います
第1は、理論のオリジナリティです。スティーヴン・ウォルト氏(ハーバード大学)は、「私的情報」や「コミットメント問題」は、既存の研究にある類似コンセプトの「焼き直し」にすぎないと、以下のように批判しています。
「『私的情報』の概念は『秘密(機密)』というなじみの観念より広義であるが、危機時のバーゲニングに及ぼす影響という点では、実質的に同じである。…フィアロンが『コミットメント問題』と呼ぶものは、国際システムのアナーキー(無政府状態)の中心的な特徴として、これまで理解されてきたものである。…(したがって、フィアロン氏が数量化した理論は)新しい理論的主張を生み出していない」(Stephen M. Walt, "Rogor or Rogor Mortis? Rational Choice and Security Studies," International Security, Vol. 23, No. 4, Spring 1999, reprinted in M. E. Brown, et al., eds., Rational Choice and Security Studies, Cambridge: MIT Press, 2000, p. 24).

第2に、現実の国際政治との関連性について、疑問が呈されています。政治学や経済学の数理理論(formal theory)は、何か現実離れしているような印象を人々によく与えます。フィアロン氏の戦争のバーゲニング理論も、このパターンから逃れていないようです。フィアロン氏は、戦前のバーゲニングを成立されるには、私的情報をより確実に相手に伝えなければならないと主張します。そして、彼は、この考えを「コストのかかるシグナル(costly signals)」として定式化して、多くの関連研究を導いてきました。しかし、危機に直面した国家が、戦争の意志にかかわる国家機密や兵力に関する軍事機密などの私的情報を敵対国に進んで提供するなど、そもそも現実的にどれほどあり得ることなのでしょうか?この点について、ジョナサン・カーシュナー氏(ボストン大学)は、「より多くの情報が入手可能な現実世界の状況を想像することは難しい」と指摘しています。さらに、カーシュナー氏は、たとえ私的情報が明らかになったとしても、「専門家が同じ情報から違う結論を引き出すことは、よくあることである」と主張して、私的情報の供給が交渉を妥結させやすくすることに疑問を投げかけています(Jonathan Kirshner, "Rationalist Explanations for War?" Security Studies, Vol. 10, No. 1, Autumn 2000, pp. 143-150)。
私のフィアロン論文の評価は以下の通りです。フィアロン氏の戦争のバーゲニング理論は、戦争発生のメカニズムに深い知見を与えていることは確かでしょう。その反面、同論文を戦争原因の研究と位置づけることに、私はやや違和感を覚えます。といのも、フィアロン氏の自身も認めている通り、私的情報の欠如やコミットメント問題は、アナーキー下の国際政治においては常にコンスタントに存在しているので、「なぜ国家は戦争より望ましい取引を決めるのに失敗したりするのか、説明できない」(p. 410)からです。つまり、(バーゲニングに失敗して)戦争が起こるかどうかは、別の変数に強く左右されるということです。そうであれば、この論文は、戦争原因を正面から理論化した研究というよりも、紛争や危機の平和的解決の失敗を合理的選択理論により説明した研究であり、同論文のタイトルも、「バーゲニング失敗に対する合理主義者の説明」のほうが、しっくりきます。
さらに、戦争のバーゲニング理論は、正直、あまりにも非現実的なロジックに依拠していると思います。これはカーシュナー氏の批判と関連しますが、戦前の合意形成の失敗や戦争の帰結は、はたして私的情報の欠如に還元できるのか、ということです。直感的に推論すれば、フィアロン氏の説明は説得力があります。たとえば、彼の説明は太平洋戦争の事例には、よく当てはまりそうです。すなわち、日米両国は、国力や戦争への決意に関する「私的情報」を(コストのかかるシグナルなどにより)相互に伝達すれば、相対的パワーや意志を反映した合意(日本の東南アジア・中国からの撤退)を戦争せずに形成できたはずだから、その方が、日米両国にとって、莫大な犠牲を払った戦争よりも、はるかに合理的である(ましである)となります。
では、フィアロン氏の理論を日露戦争に適用した場合は、どうでしょうか?日露の国力の差からして、戦前に戦争の帰結を推論すれば、上記の太平洋戦争の「反実仮想」と同じような結論に達するはずです。日本はバランス・オブ・パワーで、ロシアに大きく後れをとっていました。相対的な工業力では、ロシアが47.5に対して日本はわずか13です。陸海軍の兵力数では、ロシアが116万2000人に対して、日本は23万4000人です。軍事史の大家であるポール・ケネディ氏(イェール大学)によれば、この頃の日本の国力は「(工業力において)列強の最下位かそれに近かった」のです(『大国の興亡(上巻)』鈴木主税訳、草思社、1993年、312ページ、なお、上記の工業力・兵力のデータは1900年時点のもので、同書305、307ページより引用)。したがって、日本はロシアとの戦争に負けることになるはずだから、コストのかかる戦争などしないで、日露の相対的パワーを反映した日露合意、すなわちロシアの満州における権益や朝鮮での優越(韓国〔朝鮮半島〕の領土を軍略で使用しないこと)を認める取引を成立させるのが、両国にとって「合理的選択」ということになります。しかし、実際には、日本は国力で圧倒的劣勢だったにもかかわらず、ロシアに辛勝して、朝鮮半島の指導と保護の権利、満州の権益(ロシア軍の撤退と遼東半島の租借地ならびに東清鉄道の支線の譲渡)を確保しました(横手慎二『日露戦争史—20世紀最初の大国間戦争―』中央公論新社、2005年、100、190ページ)。つまり、日露戦争の事例では、理論の予測と現実に、大きなギャップが認められるということです。「私的情報」が完全に提供されれば、この日露戦争の実際の結果さえも、前もって分かるものでしょうか?
戦争のバーゲニング理論は、戦争研究を行うにあたり、精密な仮説を組み立てることや論理の一貫性を保つことが、いかに大切であるかを教えてくれます。同時に、安全保障研究は深刻な政策問題の解決に関連づけるべきだという学問規範を受け入れるのであれば、非現実的な仮定に立った理論は、政策上の有効かつ実行可能な処方箋を導きにくくすることでしょう。一般的にいえば、戦争の数理理論は後者に問題を持つ傾向にあり、標準的なリアリズムの戦争原因論などは、前者に弱みがあると言えるかもしれません。両方の戦争研究アプローチが相互に学ぶ余地は、まだまだ広そうです。