山に登り始めた頃は良く 「お兄さん」 と山で声を掛けられていた。
しかし、ここ何年かはまったくもって、その様な呼びかけはなく 「御主人」 と良く呼ばれている。
先日、剱岳でカニのタテバイへの取付きには雪渓の上を歩いていかなければ辿り着けないほどの残雪だった。 雪渓をヨタヨタと歩いていると背後から 「旦那さん、旦那さん」 と声を掛けられた。 パトロールと名乗る屈強な二人はスコップを背負って一人は私が平蔵谷に滑落しないように谷側にサポートについた。 パトロールに先導されて雪渓の取付きまで戻って雪渓の下をくぐって雪渓にへっれるようにスコップで加工をしたので、そこを通るように言われた。
旦那さんとは、なんちゅう呼び方やねん。 自分の事を呼ばれてると気が付いて、それで足を滑らしそうになったわい。 旦那さんは財布の中に札束がワンサカって感じやけど、歳をとっても財布の中は、いつまでたってもお兄さんです。