昨日は薄熙来の「金庫番」・徐明氏の「去世(死亡)」ニュースに隠れて見逃していたが、もう一つ、同じ44歳で去った女性の訃報があった。中国中央テレビ(CCTV)の著名キャスター・方静氏が11月18日、台湾でガンのため他界した。仕事柄、CCTVは朝から晩までオフィスで見ていたので顔には馴染みがあるが、深く彼女のことを知っているわけではなかった。
もともとCCTVの洗脳的な報道姿勢に違和感があり、中国でも以前、学者らがCCTV視聴拒否署名までしたほどだ。もちろんメディアとそのメディアで働く者を同一視するのは間違っている。実際、同局の記者とは私的な付き合いもある。だが、著名キャスターの多くが高級幹部の愛人であることが暴露され、局内の腐敗も摘発され、すっかりイメージを損なったCCTV自体に対し、興味が薄れていたこともあった。
彼女の訃報は、ある知人が、共通の知り合いである雑誌編集者、何三畏がミニブログ・微博に公表した文章を微信(ウィーチャット)で転載してくれて知った。何三畏は長年、彼女から仕事の上でアドバイスを受けるなどの交際があった。「薄熙来から重慶に来ないかと誘われている」といった話まで聞いていた。もちろん彼女は断った。「薄は嫌いだ」と答えたという。感激屋の彼は包み隠さず哀悼の気持ちを書いていた。率直で、人情味のある彼らしい追悼文だった。
方静氏はラジオテレビ界のエリートを育てる北京広播学院を卒業し、23歳にして看板番組『中国新聞』のキャスターに登用され、『東方時空』『焦点訪談』『国際観察』などの人気番組を担当してきた。英語が達者で、彼女は生前、何三畏に「国際事件のトークショーをやりたい」と話していた。彼は真剣に「あと女性を2人探して、3人で話すのがいい」と答えたそうだ。四川方言丸出しの彼が、必死にアイデアをひねり出している光景が目に浮かぶ。
何三畏の方静評を読んで、なるほどと思ったことがある。CCTVの女性キャスターの多くは、個人の意見を加えたり、誇張やわざとらしく感情移入するいかさま式の話し方をするので不愉快な感じを与える。だが彼女はそうでない。ずっしりと構え、感情を抑えた端正な話し方で、好感が持てたのだと紹介している。別の友人に聞くと、英語の語学力が特に秀でていて、英語でのインタビューは圧巻だったという。
だが彼女には影も付きまとっていた。軍事情報番組を担当していたせいなのか、2009年、元同僚の阿憶・北京大准教授から「スパイ容疑で逮捕された」「すでにCCTVを首になった」などとデマを飛ばされ、大騒ぎになった。一時、画面から姿を消したが、やがて復帰し、健在ぶりを示した。なぜ元同僚が名誉棄損に当たるデマを飛ばしたのか。不可解な点が残る事件だった。プライバシーをほとんど明かさず、晩年は人々の視界からも徐々に遠ざかっていった。
官製メディアに身を置けば、権力と完全に一線を画すことなどできない。むしろ権力の一部に取り込まれ、中には権力者として振る舞う者さえ出てくる。スパイ騒動の経緯を見て感じたのは、彼女が権力に頼った対応をしていないことだ。もし、強い後ろ盾がいれば、その人物を使って北京大の教授など一蹴できたはずだ。彼女は「私はスパイではない。デマを流せば法的責任を負う」と最低限の言葉を述べただけで、マスコミの餌食になることを避けた。
彼女は静かな死を選んだ。だとしたらそっと追悼するのがふさわしい。私は何三畏の追悼に心を寄せるにとどめる。余計な詮索は不要だろう。徐明氏の不自然な死とは全く違う。
もともとCCTVの洗脳的な報道姿勢に違和感があり、中国でも以前、学者らがCCTV視聴拒否署名までしたほどだ。もちろんメディアとそのメディアで働く者を同一視するのは間違っている。実際、同局の記者とは私的な付き合いもある。だが、著名キャスターの多くが高級幹部の愛人であることが暴露され、局内の腐敗も摘発され、すっかりイメージを損なったCCTV自体に対し、興味が薄れていたこともあった。
彼女の訃報は、ある知人が、共通の知り合いである雑誌編集者、何三畏がミニブログ・微博に公表した文章を微信(ウィーチャット)で転載してくれて知った。何三畏は長年、彼女から仕事の上でアドバイスを受けるなどの交際があった。「薄熙来から重慶に来ないかと誘われている」といった話まで聞いていた。もちろん彼女は断った。「薄は嫌いだ」と答えたという。感激屋の彼は包み隠さず哀悼の気持ちを書いていた。率直で、人情味のある彼らしい追悼文だった。
方静氏はラジオテレビ界のエリートを育てる北京広播学院を卒業し、23歳にして看板番組『中国新聞』のキャスターに登用され、『東方時空』『焦点訪談』『国際観察』などの人気番組を担当してきた。英語が達者で、彼女は生前、何三畏に「国際事件のトークショーをやりたい」と話していた。彼は真剣に「あと女性を2人探して、3人で話すのがいい」と答えたそうだ。四川方言丸出しの彼が、必死にアイデアをひねり出している光景が目に浮かぶ。
何三畏の方静評を読んで、なるほどと思ったことがある。CCTVの女性キャスターの多くは、個人の意見を加えたり、誇張やわざとらしく感情移入するいかさま式の話し方をするので不愉快な感じを与える。だが彼女はそうでない。ずっしりと構え、感情を抑えた端正な話し方で、好感が持てたのだと紹介している。別の友人に聞くと、英語の語学力が特に秀でていて、英語でのインタビューは圧巻だったという。
だが彼女には影も付きまとっていた。軍事情報番組を担当していたせいなのか、2009年、元同僚の阿憶・北京大准教授から「スパイ容疑で逮捕された」「すでにCCTVを首になった」などとデマを飛ばされ、大騒ぎになった。一時、画面から姿を消したが、やがて復帰し、健在ぶりを示した。なぜ元同僚が名誉棄損に当たるデマを飛ばしたのか。不可解な点が残る事件だった。プライバシーをほとんど明かさず、晩年は人々の視界からも徐々に遠ざかっていった。
官製メディアに身を置けば、権力と完全に一線を画すことなどできない。むしろ権力の一部に取り込まれ、中には権力者として振る舞う者さえ出てくる。スパイ騒動の経緯を見て感じたのは、彼女が権力に頼った対応をしていないことだ。もし、強い後ろ盾がいれば、その人物を使って北京大の教授など一蹴できたはずだ。彼女は「私はスパイではない。デマを流せば法的責任を負う」と最低限の言葉を述べただけで、マスコミの餌食になることを避けた。
彼女は静かな死を選んだ。だとしたらそっと追悼するのがふさわしい。私は何三畏の追悼に心を寄せるにとどめる。余計な詮索は不要だろう。徐明氏の不自然な死とは全く違う。
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