行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【2019古都取材ツアー⑤】女子学生8人との合宿生活

2019-05-07 18:43:27 | 日記
GW10連休と一部重なった取材ツアーのロジで、最大の難題は宿泊先の確保だった。経費の節約を含め、同級生の寺院に布団代だけでお世話になることも考えたが、銭湯に行けない学生が多く断念した。中国の北方では「澡堂」と通称される共同浴場があり、他人と一緒に裸の付き合いをすることに慣れているが、汕頭大学の地元である南方、主として広東省周辺はその習慣がなく、抵抗感が強い。銭湯通いは断念せざるを得なかった。南北は言語だけでなく、飲食、信仰など幅広い範囲で大きな文化の違いがある。

ホテルを予約するには空き室が限られており、ビジネスホテルでさえGW価格で手が届かない。やむなく選択したのが、最近、京都で大流行りの民泊だった。中国人観光客が急増しており、中国からの予約も容易にできる。学生たちが取材の便を考えながら東福寺の近くにある民宿「宿彩アートステイイン東福寺」の予約に成功した。4月半ばに下見をしたが、京阪、JRの東福寺駅に近く、桜並木も見られた。残念ながら学生が到着した4月22日には八重桜のみだったが・・・。





民宿は和室の3LDKで、私のために一部屋を使い、残りの二部屋はふすまを取り払って、布団を敷き詰めた。計7人分の布団しか敷けなかったが、そこで8人が雑魚寝することになった。中国の大学はほとんどが寄宿舎で、合宿のような共同生活に慣れているのが救いだった。なんの支障もなく、寝室だけでなく、洗面所、浴室、トイレをうまくシェアできた。

リビングは会議室で、毎晩、当日の反省や翌日の日程を話し合った。失敗してくじけ、泣き出す学生もいた。取材先に忘れ物をしたことを、神妙な表情で申告する学生もいた。いずれも想定の範囲内で、これもまた学びの一つである。外食の時間がないときには、近くのコンビニやファストフード店で食材を買い、質素ながらもにぎやかな夕食を囲んだ。朝食は毎日、前日に買っておいたサンドイッチかおにぎりだった。





せっかく近くに銭湯があるので、異文化体験の一つとして、一度、学生を誘ってみた。3人が興味を持ってついてきた。地元の人たちが裸の付き合いをしている様子に触れ、貴重な体験ができたが、風呂自体はあまり楽しめなかったようだ。仕方なく、これも勉強のためにと、帰り道に居酒屋に寄った。近所の住民がカウンター席でカラオケを歌っているのが面白かったらしく、さかんに携帯で写真を撮っていた。



付近は住宅街で、大きなスーパーも百貨店もなく、仕事に追われてお土産を買う時間もなかった。民宿を離れる際の荷物は、来た時と同じスーツケースのみで、見送りに来てくれた笹川平和財団の早乙女さんがそれを見て、「こんな中国人のツアーは初めてだ」と驚いていた。本職の記者の取材ツアーでさえ、帰国時には土産の袋が山のように増えているそうだ。



関西国際空港に着き、チェックインの列に並んでいる間、交代で土産店に駆け込むのが精いっぱいだった。女子学生が喜びそうなアクセサリーの店などをチラチラ見ながら、ぐっとこらえて京都奈良の街中を駆け回った彼女たちをほめてあげたい。

(続)