4日目
「おはよーございます・・・」
ベニボシ探索の実質最終日、4日目のスタートである。天気は予報で言われていたほど悪くなく、青空も見えている。
打ち合わせどおり、私とジェノサイドは有名な滝のあるエリアに挑むことにする。昨日までのエリア、3人で歩き回って採集するには少々窮屈だったので、今日はその心配なくベニボシを探すことが出来そうだ。
エゾミヤマに船着場まで送ってもらい、河口に到着。
第一便が出るまでかなり時間があったので、周囲をぶらぶらしてみる。
河畔はマングローブで覆いつくされている。他の島とは比べ物にならない数だ。
時間が来て、遊覧船に乗り込み出発。往復1800円也。
遊覧船なので、船長がマングローブの種類を解説してくれるのだが、ここでは沖縄に生息する6種類すべてが見られるらしい。私はどれがどれだか良くわからないが、ジェノサイドは違いを把握しているようだった。
30分ほど揺られて、上流の船着場に到着。ここからは歩いて滝のあるエリアに向かう。
最初のうちは、綺麗に石が敷き詰めてあり歩きやすい道だったが、しだいにぬかるみが酷くなってくる。遊覧船に乗ってた人はサンダルだったが大丈夫なのか?といらぬ心配をしながら歩くこと30分。
マリゥドゥの滝が見える展望台に到着した。
思ったより展望台が滝から離れており、ちょっと物足りない感じ。
奥のカンピレーの滝まで、道の周囲にある倒木や立ち枯れを見回りながら歩いていく。
なかなかいい感じの木はあるものの、密度は昨日までのエリアに分があるようだ。途中、マリゥドゥの滝に降りていく道があったが、封鎖されていた。
さほど時間もかからず、カンピレーの滝に到着。こちらは滝のすぐ側まで行ける。
川べりの水溜りには、ミカドアゲハが5,6頭吸水に来ていた。お土産に採って帰ろうとしたが、思ったより周囲のコケが滑りやすく、転ばないようにモタモタしていたら逃げられてしまった。不覚・・・。
行きで確認した横道などを確認しつつ戻ることにする。最初の横道にジェノサイドが入ってみるというので、私は次に行こうと、別れた直後・・・
「いました!」
「えっ!?」
ジェノサイドの歓喜の声がきこえ、慌てて引き返す。
手には、立派なベニボシの♂。
「おめでとう!」
「この木についてました!」
横道に入ってすぐの、細めの立ち枯れの根本についていたらしい。
ちょっと古めにも見えるが、裏側には樹皮が残っている部分もある。
こちらのエリアでも採れることが分かったので、探索にも力が入る。ジェノサイドはこのまま進むとの事だったので、私は別の道をいってみることにした。
良さそうな木はあるが、ベニボシの姿は無し・・・。
1時間ほど経って、ちょっと疲れてきたので展望台に戻ろうとしたら、凄い勢いで雨が降ってきた。
あわてて屋根の下に駆け込むが、あっというまに滝がうっすらボヤけるほどの土砂降り。他の観光客の人たちも避難してきたが、これではハイキングどころではないだろう・・・。ベニボシ探しは無理そうなので、しばらく休憩することにした。
・・・・・・・
30分くらい経っただろうか。大分雨も弱まってきたので、再びベニボシを探しに出る。雨でぬれた部分は嫌うという話しを聞いていたので、倒木の裏側などを重点的に見て回る。
ジェノサイドと合流し、成果を聞いてみると、なんと2頭も追加したという。しかも同じ場所で2頭同時に採れたとのこと。
「1頭目はシダにとまってて、写真に最高だったんですが・・・」
今回の目標の1つでもあるベニボシの生態写真は、未だに撮れていない。このポイントは特に斜面がきつく、重いカメラを持って行ったり来たりするのはとてもしんどいのだ。やはり大きくて重い一眼は、こういった採集には向いていない。
ベニボシが採れた木の大まかな場所を教えてもらい、見に行ってみることにする。ここもやはり急斜面で、登るだけでもかなり体力を消耗する。
たしかに良い木は沢山ある。裏側や根の周囲もしっかり確認していくが、ベニボシは現れない。やはり雨だと厳しいのだろうか。
ふと、足元を見ると長靴に不吉な影が。
「うわ・・・ヒルだ・・・・・」
幸い血は吸われていなかったが、長靴の内外に4頭もヒルが付いていた。気持悪いことこの上ない。このエリアは昨日までの場所と違い、とてもヒルが多いようで、じっとしていると上から降ってくることもあった。
私はヒルや蚊などの吸血系の生き物は大嫌い。半ばヤケクソになりながら歩き回っていると、足元のシダにキラリと緑色に光る虫が見えた。
どうやら、ジェノサイドが採りたがっていたベーツツヤコガネのようだ。こんなに綺麗な虫だったんだなーと、ちょっと感動(しかしヒルが迫ってくるので生態写真を撮る余裕は無し)。
写真は後日、ジェノサイドに撮らせてもらったもの。室内の光で良くわからなくなっているが、生体のこの虫はとても綺麗で気に入った。
ヒルから逃げるように坂を下りて、来た道を戻り、ジェノサイドと合流。ベーツツヤコガネを渡すととても喜んでくれた。良い虫と交換してくれるとの事。帰りの船の時間まで、まだ少し余裕がある。折角なので、最後に一回りしてみることに。
良い雰囲気の沢。
時間ぎりぎりまで粘ったが、ベニボシは現れなかった。今日もダメか・・・とガッカリしながら船着場に戻る。
道端にも立派な立ち枯れや倒木があるので、一応それらもチェックしながら歩く。
と、ひときわ太い立ち枯れの、ツルアダンの影に赤い虫が・・・!!
「ベニボシ!」
「マジっすか!?」
生態写真が採りたかったが、動き回っていたので諦めて、手づかみで採集。
「やった~~!!」
「こんな道端にいるのかよ!」
偶然とは思うが、私の採った3頭はいずれもツルアダンがまきついていた。今後の採集でヘンな先入観が生まれそう・・・。
最後の最後に何とか1頭採れて、やれやれと言ったところ。このまま尻すぼみになるのは嫌だな~と思っていたので良かった。ジェノサイドが、「こういうところにいるやつが、観光客に見つかるんでしょうね~」と言っていたが、なるほどそうなのかも。
その後は特に事件無く、リミットほぼぴったりで船着場に到着。
帰るころには、さっきまでの大雨がウソのようにまた晴れてきた。
電波が入る地域に戻ってくると、複数の知り合いから「本島は雨すごいけど大丈夫?」「台風来てるらしいが大丈夫か?」といった恐ろしい内容のメールが届いていた。
こちらは結構いい天気なのだが・・・。
迎えに来てくれていたエゾミヤマと合流し、成果を報告しあう。残念ながらベニボシは採れなかったそうだ。まぁ不調な遠征ってのもあるよね・・・。オオニシキキマワリモドキという巨大な虫を採っていて、ジェノサイドがベニボシと交換しようと言っていた。
たしかに美麗な虫で、かっこいい。写真はエゾミヤマのブログからどうぞ。
台風の情報も気になるし、一度宿に戻り今後の予定を立てることにした。
調べてみると、やはり台風が向かっているようで最悪飛行機が危ない。が、予定を早めることももう出来ないし、フェリーは出るみたいなので気にしないことに。
夕方はビーティングをしてみたが、疲れもありそれほどの虫は落ちてこない。
一雨あったから、条件は良いかと思ったが結構乾燥していて×。
いつもの普通種が落ちてくるばかりで、早々に切り上げることにした。
有名なサキシマスオウノキを見に行こうかと思ったが、なんだか場所を勘違いしていたようでそれほど大きな木は見れず。
周囲の汽水域にはいろんな魚がいて、釣りでも来てみたい。面白そうだ。
最後に、灯火を見て回るために南下。
なかなか美しい色合いの空。台風が来ているとは思えない。
条件は悪くなかったものの、飛んでくる虫の数が少なく、ドウガネばかりで面白くない。今回の目的の一つだったヤエヤマノコギリクワガタは、どうやらまだ発生していないようだ。
ダラダラと話しをしているうちに、小雨が降ってきた。全員かなり疲れていたので、満場一致で宿に戻って休むことにする。
今回の西表島での採集はこれで全行程が終了。
ビールを飲みながら荷物をまとめて、翌日に備える。最終日は、朝イチで石垣島に渡り、気になっていたカミキリを探す予定だ。
西表、疲れたけど楽しかったな~・・・。ベニボシを採ることが出来た喜びに浸りながら、最終日の夜もすぐに夢の世界に引きずり込まれた。
5日目(石垣編)に続く。
ぜ~ッたいに無理だもんなぁ~。
一度拝んでみたいよ。
赤い虫を…
ありがとうございます。ベニボシは感動モノでした。GWとかはいかがでしょうか(高いし人は多いと思いますが・・・)。
キミスジは仰るように普通種になっていて、あの後沢山見かけました。ちょっと拍子抜けでした。
オオニシキキマワリモドキの掲載記事は限定公開のため、恐らく他の方々は閲覧できないと思います(^^;)
ちょっとはしょってるけどこんな感じで。そういえば記事は限定だったが・・・まぁ見たい方はgg(ry