■花冠月例句会■

俳句雑誌「花冠」の月例ネット句会のためのブログ 管理 高橋句美子・西村友宏

■12月月例ネット句会入賞発表■

2023-12-11 12:46:38 | 日記
■12月月例ネット句会入賞発表■
2023年12月11日
【金賞】
05.海鳴りの何処か遠くに懸大根/桑本栄太郎
たくあん漬けにする大根を干す光景は、以前はどこにも見られたが今は少ない。海鳴りが遠くに聞こえ、寒風が吹きつける襖のような懸け根は十二月の風物詩でもある。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
29.小雪の樽湯に深く木の香吸う/柳原美知子
小雪が舞いそうな「小雪」の日。大きな樽を湯舟として使う樽湯は湯もやわらかく、木の匂いや温かみがあって、やすらぐひと時である。よい木の香りに「深く」息を吸い込んだのだ。(髙橋正子)

37.街の色変えつつ落ちる冬夕日/髙橋句美子
冬の入日は見る間に落ちてゆく。夕日が差す街の色合いもその変化がわかるほどに早く変わっていく。その景色を詠んだ。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
08.手紙出す音の聞こえて冬の路地/祝恵子
近所の人が使う路地。誰かがポストに手紙を入れる音が聞こえる。冬だからこそ、人通りもすくなく、投函する小さな音も聞こえるのだ。(髙橋正子)

24.万両や実の張り詰めて紅々と/弓削和人
万両の実はまん丸で、実は「張り詰めて」いる。その色は真っ赤で輝いている。見事な艶である。「張り詰めて」に緊張感と、万両の可愛い丸さが読み取れる。(髙橋正子)

33.冬の鵙いまは静かに止まりけり/多田有花
秋の間は青空があれば、どこからでも鋭い鳴き声を響かせていた鵙。冬になって、鳴く声を聞かないが、実は枝に止まっていたりする。性格がかわったように「静かに止まり」の生態を見せている。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
05.海鳴りの何処か遠くに懸大根/桑本栄太郎
半農半漁の浦の風景だろう。厚い雲覆われ海鳴りの聞こえる村の姿が想像される。風を防ぐための石垣の塀に懸けられた大根は海風に萎び、甘みたっぷりに仕上がる。正月のなますに使われるのだろう。浦の生活が強く匂ってくる好きな一句。(吉田 晃)
景が良く見える。大根を干してる場所は海からはなれた寂しい場所に有るのだろう。何処か遠くに、が効いている。(廣田洋一)


07.踵かえせば冬日まともに眩し/祝恵子
この時期は昼間でも太陽の高度が低く日差しを眩しく感じます。夏は太陽が高いためこういう眩しさはないですね。 (多田有花)

08.手紙出す音の聞こえて冬の路地/祝恵子
通常、ポストへ投函する音を気にすることもなく雑踏の中に流れていく日常の一コマだが、ポストの底のさまざまな手紙類に触れたわずかな響きが冬の冴えわたる凛とした空気を想像させられる。手紙の宛先に込めた祈りにも似た想いが表出したかのようだ。(弓削和人)

23.静かなる雨に水鳥眠りたる/弓削和人
水鳥が集団で眠っています。それを見守るように降る細やかな雨、絵画のような情景です。 (多田有花)

24.万両や実の張り詰めて紅々と/弓削和人
29.小雪の樽湯に深く木の香吸う/柳原美知子
33.冬の鵙いまは静かに止まりけり/多田有花


【入選/17句】
03.鴛鴦や沼も眠たき日のあるや/小口泰與
水面か水辺にじっとして動かないオシドリ。沼も眠っているのではないかという冬の静かな、寂寞とした情景が浮かびます。 (友田修)
鴛鴦といえば、鴛鴦夫婦という言葉があるほどですからつがいのイメージ。仲良く並んで泳いでいるのでしょう。取り囲む沼は風もなく静かで穏やかです。 (多田有花)

09.冬夕焼け豆腐売りの車の声/祝 恵子
昭和40年代あたりを思い起こさせます。全体が夕陽で茜色に染まり、ピープーという豆腐売る独特の間延びした音、のどかです。 (多田有花)

11.江の島や宝石飾る冬の空/廣田洋一
「江の島」だからいいです。「宝石」はイルミネーション?それとも遠くの街の輝く光でしょうか? (多田有花)

13.草の穂の重き実をつけ枯れ果てり/吉田晃
草は枯れても重き実をつけている。野生の生命力に感動します。枯れ果てた草の軽さと実の重さの対比にしみじみと 自然の摂理が思われます。(柳原美知子)

16.病室の窓に打ちつく冬の雨/高橋秀之
病室で聞く冬の雨の窓を打つ音は不安で淋しいですね。入院時は明るい日差しと夜の月光に癒されたものです。1日も早いご快復をお祈り申しあげます。 (柳原美知子)

22.踏切の明滅のこす枯野かな/弓削和人
一面の枯野となったさびしい野に踏み切りの明滅と時々過ぎる電車の音。今年もいよいよ終わり、本格的な冬の到来がひしひしと感じられるようです。 (柳原美知子)

26.切り通し落ち葉と空の高さかな/友田修
切り通しの落ち葉は高く積もり青空にとりどりの色を描いているようです。 (柳原美知子)

30.棚田米餅に搗く音橋わたり/柳原美知子
棚田で稔ったもち米でお餅をつかれています。その音が川の向こうの家から響いてきます。収穫の喜びですね。 (多田有花)

31.冬半ば入日は塔の先かすめ/多田有花
入日には春夏秋冬にその季節に合う、素晴らしい景色を見せて呉れますね?ここ数日穏やかな天候が続き、どんどん沈み行く冬の茜空には高い鉄塔の先端をかすめて居ります。哀愁の籠る時間ですね。 (桑本栄太郎)
冬半ばのこの時期、夏とは違う軌跡で太陽が塔の先をかすめて日の入りします。塔をかすめがその低い軌跡を感じさせてくれました。(高橋秀之)

32.さんさんと桜冬芽の陽を浴びぬ/多田有花
桜冬芽とともにさんさんと陽を浴びておられる気持ちよさそうな作者の様子が想像されます。 (柳原美知子)

34.落葉積もり落葉の奥に松ぼくり/西村友宏
積もっている落ち葉を踏み分ける音が聞こえてくるようです。その奥に大小の松ぼっくりを見つけ、拾い帰るのも楽しいものですね。 (柳原美知子)

35.星空へ熊手持ち上げ拍手湧く/西村友宏
熊手はもと実用品であったが、今は七福神のような縁起のいいものをつけ、大きな飾り物になった。その熊手を買った人への賛辞を表す大きな拍手が冬空に沸き上がった。年末の縁起の良い景である。(小口泰與)

14.降る雪や奇岩の寺の遠き鐘/吉田 晃
18.実家から届くみかんを籠に盛り/高橋秀之
28.人参の葉の青束ねそっと抜く/柳原美知子
36.電飾の街へ懐炉を手に包み/西村友宏

■選者詠/髙橋正子
21.冬かもめ鴨と泳げば鴨らしく/髙橋正子
冬晴れの池で楽しそうな鴨の群れと一緒になって泳いでいるかもめ。鴨と同じような仕草をして、鴨に同化しているようで、ほほえましく、いつまでも見ていたい光景ですね。 (柳原美知子)

19.潜る泳ぐ鴨いきいきとわが見るに
20.潜りし鴨嘴にたらたら水たらし

■選者詠/髙橋句美子
37.街の色変えつつ落ちる冬夕日/髙橋句美子
午後をとりわけ短く感じるこのごろです。お昼を過ぎるとあっという間に日差しは傾き夕陽となって街を赤く染めます。 (多田有花)
冬日が沈んでいく街の様子が見えてきます。 (祝恵子)

互選高点句
●最高点句(5点/同点3句)
05.海鳴りの何処か遠くに懸大根/桑本栄太郎
13.草の穂の重き実をつけ枯れ果てり/吉田晃
37.街の色変えつつ落ちる冬夕日/髙橋句美子

集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。
コメント (8)
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